所在地 | 静岡県浜松市西区館山寺町195 |
開設 | 1970年4 月 |
面積 | 31.9ha |
公園種別 | 総合公園 |
設置・管理者 | 設置者:浜松市 指定管理者:(公財)浜松市花みどり振興財団 |
昭和45(1970)年4 月開園。浜松唯一の動植物園で、フラワーパーク31.9ha と動物園13.48ha 総面積は45.1ha である。
周辺は舘山寺温泉や奥浜名湖が位置し観光スポットとして人気が高い。平成15 年に大温室とエントランスがリニューアルされた。その後平成21(2009)年にモザイカルチャー世界博が、平成26(2014)年に全国都市緑化フェアが開催された。園内は、起伏のある地形で自然の池も多く、3000 種の樹木や草花を植栽展示し、「花の図書館」として親しまれている。
はままつフラワーパーク( 以下フラワーパークと略す)は、植物園、動物園を有する舘山寺総合公園の一角を占める施設である。なお、フラワーパークは昭和45(1970)年に開園、舘山寺総合公園は昭和54(1979)年に都市公園として認定されている。
開園当初は、市の外郭団体である「浜松市フラワー・フルーツパーク公社」が管理を受託していたが、平成25(2013)年度から指定管理者制度の入にあわせ、旧公社の組織体制が見直され、「公益財団法人浜松市花みどり振興財団」へ移行した。
名称も変更され、経営・人材のスリム化が図られた。理事長には、浜松出身の日本初の女性樹木医で「あしかがフラワーパーク」の経営改善の実績がある、塚本こなみ氏が就任した。平成25(2013)年から27(2015)年は特命により同財団が選定され、現在は2期目であり平成28(2016)年から平成32(2020)年までの5か年で公募により選定されて
いる。
職員数は27人で、内訳としては、事務職14人、植物管理などにあたる技術職は13人、そのうち嘱託職員は4人である。
指定管理者になるまでは、芝刈りや除草剤散布等、清掃業務は委託していたが、平成25(2013)年からは、技術職員とアルバイト等により直営で行っている。
警備、消防、電気設備等の保守・点検は、業者委託により対応している。
職員には、1級、2級造園施工管理技士、樹木医、園芸療法士、自然観察指導員、農業改良普及員等植物管理等に関する資格取得を推奨しており、半数以上は2級造園施工管理技士を取得している。
市民参加活動としては、登録制のボランティアが園芸作業や園内ガイドを行っている。また、近隣の大学や高校に参加を募り、起伏の多い園内移動のサポートとして「車いす押し隊」を結成し、利用の多い週末に活動している。平成27(2015)年度は述べ128人が参加した。この他、障がい者等の社会復帰の支援として、園芸療法なども取り入れた植物管理の軽作業に参加してもらっている。
平成27(2015)年度の指定管理料は約1.4億円であるが、これに事業収益の約4.4億円を加えた額が、管理費に充てられている。
原資となっているのが利用料金制で、園内の諸事業がこの対象となっている。利用料金制による収入は、入園料、駐車料金(200円/ 回・台)、レストラン、売店、フラワートレイン、施設利用料、自販機等である。このうち、入園料は約43%、売店24%、レストラン13%、駐車場10%の事業収益が上がっている。
年間の入園者の比率は、春季の3~6月のサクラやチューリップ、バラ、フジ等が次々に開花するもっとも花のきれいなこの4か月間が、65~70%を占めており、7~9月の入園者は10%に満たなかった。従前の入園料は、年間を通じて大人800円であったが、指定管理者となってからは、経営改革をすすめる塚本理事長の「花の美しさは商品。商品の価値によって値段は変わる。植物園で年中定額は正当な価格でない。」という考えの下、
「季節や花の見ごろに応じた適正な価格制度に基づいた入園料の徴収」となる変動料金制を取り入れることとした。
料金は、表1のように花の見ごろに応じて変更している。
大人料金では、3~6月は600~1,000円、7~9月は無料、10~ 翌年2月は500円である。500円を徴収する冬季は、園内で利用できる500円の買い物券を提供しているため、実質的には無料となっている。夜桜、ホタルなどのライトアップが行われる期間は、18時以降の夜間入園が600円で昼間からの来園者は追加料金なくそのまま利用できる。
従前は、高齢者の利用が主体であったが、導入後は有料期間には見られなった乳幼児を連れた家族の増加等、新しい客層の開拓にもつながっている。
7月から9月の無料期間では、入園者数が年度の違いがあるものの、導入前の3~4倍に増加した。この期間は入園料は無料ではあるが、駐車場料金や園内レストランなどの利用が増えるため、収支は賄えている。
冬期は500円の買い物券を提供することで無料となっているが、入園者の90%以上が利用しており、500円以上の利用があるため、消費効果が向上し売り上げ増につながっている。
もともと、フラワーパークは花卉園芸の振興や浜名湖舘山寺温泉の観光施設拡充に資することを目的に整備された施設ではあるが、整備後40年以上が経過し、施設の老朽化や陳腐化に加え、周辺での公園・レクリエーション施設の整備も進んだことから、「入園者の減少により予算が削減」され、これが「管理負担が大きい花壇の削減」につなが
り「魅力低下と入園者の減少」といった、負のスパイラルを招いていた。
そこで、塚本理事長の「桜の美しいところ、チューリップの美しいところは全国いたるところにあるが、桜とチューリップの競演を同時に楽しめる場は他にない。356日のうち2週間、本当に美しいものを提供し、人の心を震わせるどこにもない庭園をつくっていこう」という言葉に応えるため、職員も奮気し「世界一美しい桜とチューリップの庭園」として打ち出した結果、年間30万人に満たなかった入園者数が2年で年間77万人まで伸びることとなった。
桜は、ソメイヨシノ500本、八重桜130品種600本、山桜等を含めると1,300本あり、長い開花期間を楽しめる( 写真1)。
チューリップは約50万球植えている。球根は、基本的に自前で保存・管理しており、植え付けに1か月程度要し、長期間楽しめるように冬期から
温度管理を行った鉢栽培のものを使用している。 約5,000㎡の花壇は、春花壇、夏花壇とそれぞれ10万株以上を使用した四季の植え替えを行い、花のない場所を作らないよう工夫している。植え付けのデザインは、職員自らが考え、品種や色、植え付けや開花時期のほか高さや密度も考慮したデザインとなっている。
花の種類の多い春季は圧倒的なボリューム感を見せ、花の少ない夏季は色彩豊かな葉物を多用している。
園内の中央部の噴水池を囲む花壇は、三角形の模様をベースに、定期的に有名なキャラクターや季節に合わせたデザインを職員自らがデザインしている( 写真2)。
大温室( クリスタルパレス)は、年5~6回展示替えを行っている。冬期は、クリスマスツリーやポインセチアなどの展示を行うなど、季節感やその時々の事象に合わせた展示を心がけている。
平成22(2010)年に、舘山寺温泉のおかみさん会からの寄付により整備され、その後種類を増やし拡張した艶やかなフジが楽しめる藤棚や、平成26(2014)年に新たに整備され、全国的にも著名なガーデンデザイナーの吉谷桂子氏に監修を依頼し話題となったスマイルガーデンも人気である(写真3)。
このほか、フラワーパークならではのモザイカルチャーがある。これは、草花を利用した立体造形で、平成21(2009)年に開催されたモザイカルチャー世界博の遺産として園内5か所に設置されており、大きなものは高さ3mを超えるものもある( 写真4)。
園内の主要なエリアの植物は、植栽時のデザインから植え付け、その後の管理までを責任をもって行う担当者を設け、プレートに担当者名を記載し植物とともに紹介している。職員にとっては意識改革や意識向上につながるとともに、苦労した部分や見てほしい情報なども記載するため、来園者の興味を引いている。
ソメイヨシノをはじめ、開園当初に植栽された樹木は高齢で落枝等による事故が発生しないよう、毎日園路沿いを中心に巡視等を行っている。
観光事業者への利用促進の取り組みとして、職員に旅行代理店のOB を雇用し、そのノウハウを生かした効果的な売り込みを行っている。その効果の一つとして、インバウンド対策として市の観光課などと台湾等諸外国へ出向き、3,000人のツアー客の受け入れにつながっている。
隣接している動物園( 市直営)とは、園路でつながっているため、共通券という割引券を発行し、「写生大会など」共同イベントを実施している。また、情報共有を図るため、月1回連絡会議を行っている。
年末年始は、近隣の舘山寺温泉に滞在する観光客もいるため、施設のメンテナンス等を除き、定休日を設けていない。夜間営業の期間は、舘山寺温泉観光協会と連携し、宿泊者用の夜間入園券の販売や「ガイド付き蛍ツアー」を開催している。
園内交通としてフラワートレインを運行している。大人100円で乗車でき、年間約13.6万人の利用があり黒字の事業である。運転手によるガイドが、旬の魅力をアピールする話術に長けており、リピーターや固定客の獲得に大きく寄与している( 写真5)。
園内2か所にアンケート用紙を置き、施設満足度の向上を把握しつつ、要望の多かったエレベーターの設置やトイレの改修などを行い、浜松市とも連携して整備を進めている。
課題としては、職員の年齢構成の偏りが生じているため、園芸技術の継承と法人の適切な経営管理を行っていくためにも、計画的な職員の採用と人材育成が必要である。また、今後着実に入園者を増加させるためには、これまで蓄積してきた技術を活用して、感動や癒しを提供し、そうした取り組みをリアルタイムで情報発信し続けることが必要である。
塚本理事長が心掛けてきた、入園者が感動しているかどうかという「感動分岐点」こそ重要であり、それを超えるための公園づくりを今後も続けていく。
取材協力:公益財団法人浜松市花みどり振興財団