指定管理者による施設のリニューアル提案

大阪府営蜻蛉池公園『あじさい園』

カテゴリー:リニューアル 植物・施設管理

大阪府営蜻蛉池公園『あじさい園』 写真

施設概要

所在地 大阪府岸和田市三ケ山町大池尻 701 番
開設
面積 57.6ha
公園種別 広域公園
設置・管理者 設置者:大阪府 管理者:蜻蛉池公園P&Mグループ(平成29年3月)

泉南地域の広域レクリエーションの中心となる岸和田市中央の丘陵地帯にある公園である。ローズガーデンやあじさい園、水仙郷、花木園では美しい季節の花々を観賞でき、ゆったりと水辺の空間を満喫できる水と緑の音楽広場、蝶やとんぼの形をした大型遊具のある子供の国、テニスや球技が楽しめるテニス村がある。小さな子どもから大人まで幅広い年齢層対象とした総合的な公園である。
[主な施設]
子供の国(トンボの遊具、チョウの遊具、大すべり台、流れの広場)、お山の広場、水と緑の音楽広場、バラ園、花木園、あじさい園、水仙郷、大芝生広場、おべんとう広場、展望台、かえで池、大池、野原の広場、ふれあいの森、もみじ谷、テニス村(テニスコート・球技広場)、スポーツハウス、球技広場、ゲートボールコート、とんぼハウス

詳細

1.はじめに

指定管理者制度の実施から10年以上が経過し、公園管理にも導入されている。導入状況は、全国で12,098か所( 都市公園総数103,919か所の約12%)、開設面積では50,688ha( 都市公園面積120,090haの約2%)となっている(平成25(2013)年度国土交通省)。指定管理者の種別では、財団・社団が約60%で、民間企業は32% となっている。
このように公園管理においても導入が進んでおり、公園管理の一翼を担っているが、公園施設の再整備や改修に際して、指定管理者から提案する事例は多くはない。蜻蛉池公園は、都市と郊外の接点部となる大阪府岸和田市の自然豊かな丘陵部に立地し、地元の岸和田市民をはじめ、泉州地域の都市住民を中心とした利用者が訪れる公園である。
指定管理者は蜻蛉池公園P&Mグループであり、一般財団法人大阪府公園協会、岸和田造園緑化協同組合、株式会社ヘッズで構成されている。管理運営のコンセプトとして「蜻蛉池ファミリア」(管理者、利用者、ボランティア、NPO、企業、行政が公園や地域に愛着を持ち、活性化に向けて共に取り組む公園)を提唱している。こうした公園を「よりよくしたい」との思いを持つ指定管理者が、公園の魅力向上や活性化を通してさらなるサービス向上を目指し、提案から再整備につながった取り組み事例として蜻蛉池公園あじさい園のリニューアルを紹介する。

2.あじさい園の整備・改修
(1)整備までの経緯

蜻蛉池公園では、公園の最大の魅力である地形・自然環境や、背後の山々と一体となった植栽景観の質を、限られた予算・人材の中で効率よく高めていくため、スタッフ一丸となって知恵を出し合い、実践していくための植栽管理QC サークル活動を行っている。同活動は、現況に則した最も効果的な植栽管理を行い、魅力を向上していくために、5年間の指定管理期間を活かした長期的視点に立った景観づくりを目指している。
○植栽管理手法に関するトライ&エラー
○臨機応変な対応による植栽の質の維持および向上
○長期的視野に立った自主的な取り組み
あじさい園は、元は梅林の予定だったようであり土壌は海成粘土で、風が強く、日照が良い場所にある。日照り対策として長期的な管理のメリットを活かし自動散水装置を先行投資として整備した。平成25年度の降雨不足では、自動散水装置による潅水、寒冷紗による集中的な日照り対策を実施した結果、例年に近い花付きの維持に成功している( 写真2)。
こうした取り組みの一環として「あじさい園」の植栽環境について大阪府岸和田土木事務所と共同で改善を検討するワーキングが実施され、「あじさい園植栽改善提案書」の作成がなされた。大阪府との共同ワーキングを設けたことで、あじさい園の現状把握、改善点を共有でき、より迅速で実現性の高い提案書につながっている。
蜻蛉池公園の特色の一つに「バラ園」が挙げられ、「バラ園」からリニューアルされた「とんぼハウス」と続き、「あじさい園」の魅力向上を行うことで、連続的かつ一体的な魅力・花の名所づくりに発展させている。

(2)提案の背景、目的、コンセプト

あじさい園は、日照、土壌、水分条件ともあじさいの生育にとって厳しい環境であり、あじさいの健全な生育景観を保つには難しい状況にある。また、様々な品種が追加植栽されているものの、経年変化に伴い、明確なゾーニングや植栽設計の意図が分かり難くなってきていた。
このため施工提案では、厳しい環境に対応できるよう適正な植栽基盤づくりや、多様な品種が存在する特性を活かした、あじさい園の魅力向上のための整備・改修を検討し提案することを目的としている。このため、ワーキングを継続し、計画提案に引き続き、設計に向けて現場情報の提供や株の掘り取り撤去を行うなど、指定管理者、大阪府との共同の取り組みが実施された。
そうした成果として、現場を管理する指定管理者しか知り得ない情報を提供する等、大阪府と指定管理者との共同ワーキング形式により他の公園のモデルとなるような新たな公園の魅力向上や活性化に係る検討体制を確立した。
あじさいの園( 庭)、あじさいの小径、あじさいの谷の3つの表情を巡り楽しむあじさい園がコンセプトになっている。開放感のある洋風なあじさいの庭から、山奥の風情ある斜面地の和風の景観まで変化を楽しめる設計となっている。

(3)具体的な内容

I エントランス部分

①排水性の向上と維持管理および写真撮影に活用できる通路空間の確保を目的とした畝整備、防草シートの整備による植栽基盤の改善。
②夏の日差し、冬の強烈な寒風等、過酷な環境で生育できる品種と既存品種との入れ替え。

II 中央部分

①アジサイの生育に必要な木陰を確保することや利用者の休憩スポットを提供することを目的とした植栽地の基盤改良や高木植栽。
②回遊性向上のための横断園路の整備。

III 奥部分

①奥行きのあるあじさいの谷を一望できる視点場を提供するための眺望ポイントの整備。
(4)期待される効果
①魅力向上:あじさいの園、あじさいの小径、あじさいの谷
・開放感のある洋風のあじさいの庭から、山奥の風
情ある斜面地の和風の景観まで3つの表情を巡ることができる。
②ランニングコストの低減
・防草シートが剥がれ、除草を常に行う必要がある等、当初の管理内容と現状のあじさい園の管理内容は異なっており、管理コストは大阪府の設定からオーバーしている。その赤字コストの解消につながる。
3.提案から契約までの流れ

指定管理者からの提案に基づき、大阪府とともに、現地視察、改善案の説明・協議が実施された。改修提案に基づき、大阪府が実施設計・積算作業を進め、工事発注作業を行った。一般競争入札による工事発注であり、工事は岸和田造園緑化協同組合の組合員である株式会社出口園芸が落札した。

4.施工・完成までの経緯

施工に際しては、アジサイの配植計画を作成し、高木の植栽や土壌の改善、新品種の導入などが行われた。改修工事中は、岸和田造園緑化協同組合のホームページで案内をするなど利用者への情報提供も実施していた。工事は全部で三期位が見込まれており、現在は一期が終了したところである。
また、改修にあたり公益財団法人黒田緑化事業団の平成27(2015)年度植樹事業も活用している。内容はアジサイ、エノキ等328本、事業費800万円である。

5.今後の展開
(1)整備効果、反響、課題

平成27(2015)年度末工事なので、整備の効果は未知数であるが、次の効果が期待できる。
①植樹により、将来的には木陰ができて生育環境が良くなる。
②高畝整備により、排水環境が良くなり良好な生育が期待できる。
③アジサイ株の植え替え更新により、良好な開花が期待できる。
④新品種の導入により、観賞の楽しみ、話題性が期待できる。
課題としては、エントランス部分に続いて奥側の整備が順次可能となるかが課題である。

(2)あじさいフェア

第10回あじさいフェアが平成28(2016)年6月4日( 土)~19日( 日)の期間で開催された。今年度はリニューアルによるボリュームの調整や、植え替えの影響で花付きがよくない面もみられたが、桃山学院大学茶道部の協力による呈茶コーナーや、あじさいの挿し木教室、とんぼマルシェ、スタッフの手作りによるししおどしなど好評であった。6月12日のイベント時には1200人の来園者でにぎわった。

まとめ

 こうした植栽管理の取り組みは、専門技術指導者による指導や、造園職人の技術の活用といったJV の強みを生かした適切な体制によって実施されている。また、指定管理者として従来の委託による管理運営を踏襲するのではなく、計画・整備の結果をハード面もソフト面も含めて検証することが指定管理者としての役目と考え、行動に移している本事例のあり方が、指定管理者としての本質的なあり方かも知れない。

取材協力:蜻蛉池公園P&M グループ

 

 

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