北谷端公園石の山と行船公園ジャンボスライダーの事例

安全規準に対応した現場打遊具の改修

カテゴリー:リニューアル 安全対策

安全規準に対応した現場打遊具の改修 写真

施設概要

所在地 北谷端公園:東京都北区滝野川7-14-1                       行船公園:東京都江戸川区北葛西3-2-1
開設 北谷端公園:昭和18(1943)年 行船公園:昭和42(1950)年
面積 北谷端公園:3,180㎡  行船公園:29,752㎡
公園種別 北谷端公園:街区公園  行船公園:運動公園
設置・管理者 北谷端公園:北区  行船公園:江戸川区

「北谷端公園」
JR 板橋駅近くの住宅地の中にあり、近隣の子どもや保育施設の幼児たちで連日賑わっている。公園の中央にある「石の山」は公園のシンボルとして親しまれ、公園の再生整備に合わせて改修された。
主な施設:石の山、遊具、砂場、トイレ、防災用施設等
「行船公園」
昭和8年に田中源氏が区民福祉の増進と生活文化向上のための公園用地として東京市へ寄付したもので、昭和25 年に東京都から江戸川区へ委譲されたのを機に公園本来の姿として計画整備された。「行船公園」の名称は、田中源氏の屋号にちなんでいる。
主な施設:平成庭園、源心庵、釣り池、水生池、遊具広場・桜広場、自然動物園等

詳細

1. はじめに

近年、子どもの遊具における事故の発生等を受けて、遊具の安全に対する世論が高まっている。平成26(2014)年には国土交通省の「都市公園における遊具の安全確保に関する指針( 改訂第2版)」( 以下 安全指針)が公園管理者等に対して通知され、同年に業界規準である( 一社)日本公園施設業協会の「遊具の安全に関する規準PFASP-S:2014」( 以下 安全規準)も公開された。
「現場打遊具」は、安全指針では「石の山・コンクリート製の山や地形を利用したすべり台等、現場に合わせてコンクリート等を打設して築造した遊具」とされており、職人によって製作されるオリジナルの遊具である。遊び方も様々で、集団で遊び空間を展開することができ、他の遊具に比べ寿命も長いため多世代に親しまれている。しかし、昭和に製作された現場打遊具は老朽化や職人の減少、遊具の指針・規準に対応した安全確保が難しい等の問題があるため、改修困難と判断されたのち撤去されるといった例が増加している。そのような状況もある中、ここでは安全規準に配慮した改修を行った事例について紹介する。

2. 東京都北区 北谷端公園
<再生整備の一環としての改修>
(1)改修の背景と目的

北谷端公園は、昭和18(1943)年に開園し昭和37(1962)年に再整備が行われたが、その後は大きな改修等は実施されていなかった。そのため、経年等による老朽化が進行していた。平成22(2010)年3月策定「北区基本計画2010」の基本目標「安全で快適なうるおいのあるまちづくり」における「まちなかお花畑整備事業」の対象公園に位置付けられ、再生整備事業が実施されることとなった。

(2)再生整備事業の概要

1)事業スケジュール
平成23(2011)年度:基本設計(ワークショップ)、平成24(2012)年度:実施設計、平成25(2013)年度:整備工事、平成26(2014)年度:供用開始であった。
2)設計方針の決定
北谷端公園の再生整備事業では、地域住民の参画を得て地域住民の意見を反映した整備を行うため基本設計時に実施したワークショップで整備のイメージプランを決定し、設計を進めた。
3)ワークショップの開催
ワークショップは地元の3つの町会自治会を対象に参加者を募集し、全4回各回約20人の参加者で行われた。
再生整備に対する要望や公園利用のルールについて、盛んに意見が交わされた。石の山について、ワークショップでは「石の山は遊んでいる子どもが多く、残してほしいが危険な個所は改修してほしい」という総意が出された。また、地元の小学生へのアンケート結果でも「好きな遊具」の上位であった。以上のことから石の山は安全規準に配慮した改修を行うこととなった。

(3)石の山の改修内容

北区では遊具の設計は安全規準に基づいて実施しており、石の山についても改修時に最新版であった。JPFA-S:2008の規準に基づき以下の項目について検討し設計を行った。

《主な改修ポイント》
○安全領域の確保:滑降部着地部と近接した砂場、象形遊具、平板の撤去。
○落下高さの低減:落下高さが3m を超える頂上部の塔の撤去、設置面にゴムチップ舗装を敷設。
○落下防止柵:遊具の特性上最小限の手摺しかないため落下防止柵を設置。
○救助対策:大人が子どもを救助できる構造とするため階段を新設。
○滑降出発部:着座姿勢に導くためのガイドバーとして隣接部の落下防止柵を利用。
○側壁:大型滑降部に側壁が無いため新設。
○減速部:滑降面減速部の長さが十分でないため減速部を延長。
○着地部:着地部のくぼみ・躓き防止のためゴムチップ舗装を敷設。
○動線の交差:大型滑降部と両隣の登り面の境界に柵を設置。
(4)苦労した点

地元町会自治会から複数の祭事を避けた期間での工事を要望されたため工期の厳しい工事であった。小学校へのアンケートからの要望を受けて既存より複数の遊具を増設したため、各遊具の安全領域の確保と遊具の配置のバランスを取るのに苦労した。

(5)利用者からの反応

保育施設の散歩コースとなっており幼児の利用が多い公園である。また、公園が小学校に隣接していることから、石の山を中心に以前より多くの児童が遊具等で遊んでいる。オープン時には多くの子どもたちが順番待ちをして遊んでいたため好反応であったと考えている。

(6)管理体制

供用開始後の管理は公園河川係が担当している。遊具点検は年1回、見回りは行っていないが公園清掃の委託者が異常を発見した場合は連絡をもらう体制とし、連携を取っている。現在までに異常や事故は発生していない。

3. 東京都江戸川区 行船公園
<遊具単体の改修>
(1)改修の背景と目的

行船公園は、区営の自然動物園と築山池泉廻遊式の平成庭園で構成されている。自然動物園は平成25(2013)年に開園30周年を迎えた。
同園内のジャンボスライダーは昭和42(1967)年に設置され、親子連れや子どもの利用が多いことから老朽化及び安全確保対策の観点から安全性を見直し、改修を行うこととなった。改修内容の検討にあたっては、JPFA-S:2008の安全規準と整合を取った。

(2)事業スケジュール

改修計画・設計、実施設計ののち平成22(2010)年度に整備工事を行い、同年度に供用開始した。

(3)ジャンボスライダーの改修内容

安全規準に基づき以下の項目について検討し、改修を行った。

《主な改修ポイント》
○着地部:共有する両側の斜面の着地面及び通路部が狭く動線交錯の危険があるため拡幅。
○設置面:安全領域を拡幅しゴムチップ舗装敷設。
○落下防止柵:高斜面部のガードレールが斜面途中までしかないため落下防止柵を設置。
○ステップ改良:高斜面部背面の金属ステップの踏場奥行が狭く、ステップを追加し延長。
○踊り場の設置:斜面上部での順番待ち、立ち位置変更等の安全のため踊り場を設置。
○ホールドの追加:自然石は登ることを想定したものではなかったため、高斜面部背面にホールドを追加し安全なルートを新設。
(4)工夫した点

昭和42(1967)年に設置された現場打ち遊具であるため安全基準を満たすことは難しいが、改修にあたって上述の視点を持って工夫して行うことにより安全確保対策を行った。

(5)その他の公園の対応

行船公園のジャンボスライダー改修と同時期に、区内の2公園( 船堀スポーツ公園、平井三丁目公園)のジャンボスライダーも同様に改修を行い、利用者の安全性向上に努めた。

今後の展開

統一規格を持たない現場打遊具は、主に標準的な遊具を対象とする安全指針や安全規準に当てはめることが難しいが、最近では解体後に新設される例もある。現場打遊具の遊びの形態は複合型であり設計者の意図と利用者の遊び方が異なる場合もありうる。子どもの遊びにはリスクとハザードが存在し、安全指針でリスクは「遊びの楽しみの要素で冒険や挑戦の対象となり、子どもの発達にとって必要な危険性は遊びの価値の一つである」とされ、一方でハザードは「遊びが持っている冒険や挑戦といった遊びの価値とは関係のないところで事故を発生させるおそれのある危険性である」とされており取り除く必要がある。自ら考え工夫し、譲り合い、色々な遊びを展開できる現場打遊具を今後も多くの子どもたちに経験してもらいたい。

取材協力:北区土木部土木政策課事業計画係
江戸川区土木部水とみどりの課調整係
みどりサービス第二係

 

 

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