カテゴリー:地域活性化・コミュニティ 子育て 市民参画
所在地 | 北海道札幌市 |
開設 | |
面積 | |
公園種別 | |
設置・管理者 |
街区公園は、子どもの遊び場として一番身近にある公園であり、また、特に幼児などの保護者にとっては、地域とのつながりや子育ての情報を得る上で重要な場のひとつと言われています。こうした保護者からは、幼児向けの遊具の設置や、小学生など大きな子どもと入り乱れることなく、安心して利用できる遊び場を求める声が多く寄せられています。
これを受け本市では、平成20年度から23年度にかけて、子育て世代の支援と公園の利用促進を目的として、就学前の子供とその保護者の利用に特化した「キッズコーナー」を公園の一角に整備しましたので、事例として紹介します。
人口の高齢化が急速に進展する社会状況の中、本市の公園についても、高齢者向けに散策路の整備や休憩施設の設置などを進めていますが、街区公園では、利用者のうち幼児と小学生をあわせた子どもの割合が、現在も全体のおよそ3分の2を占めており(図1)、依然として子どもの遊び場としての機能が重要です。
また、保護者にとっても、自宅近くの街区公園は、子育てに関する情報交換の機会を得る場、地域とのつながりを持つ場として重要だと言われています。こうした中、幼児を遊ばせる保護者からは、公園管理者に対し、安心して利用できる遊び場を提供してほしいとの要望が多く寄せられています。これらの要望の背景には、子どもの遊び場であっても、多くの遊具は小学生の利用を想定したものであることや、遊びの区域が明確に区切られていない場合、年齢の違う子ども同士が入り乱れ、運動能力が未発達な幼児にとっては危険が伴うという状況があります。そこで本市では、子育て世代の支援と公園の利用促進を目的に、就学前の幼児とその保護者の利用に特化した「キッズコーナー」を公園の一角に整備することとしました。
取り組みは(1)~(5)の手順で進めました。
(1)対象公園の選定
(2)事前ヒアリング調査
(3)ワークショップ
(4)設計・工事
(5)利用者ヒアリング(成果検証)
以下、各プロセスの概要について報告します。また、(5)については、「4.効果・成果」に記述します。
キッズコーナーの整備にあたって、プランニングの際に地域の協力が得やすく、整備後に多くの利用が見込まれると考えられる以下に示した①、②に該当する公園を対象とし、各区1カ所ずつ、市で10カ所選定しました(表1。街区公園9カ所、近隣公園1カ所)。
①乳幼児の占める人口割合が高い地域内にあること
②地域住民が参加する子育てサークル活動等が恒常的に行われている公共施設に近接すること
表1 対象公園一覧 | ||
公園名 | 所在区 | 公園種別 |
小野幌くりの木公園 | 厚別区 | 近隣公園 |
菊水亀の子公園 | 白石区 | 街区公園 |
東月寒白ゆり公園 | 豊平区 | 街区公園 |
藻岩どんぐり公園 | 南区 | 街区公園 |
平岡つぼみ公園 | 清田区 | 街区公園 |
篠路駅前公園 | 北区 | 街区公園 |
北光ライラック公園 | 東区 | 街区公園 |
北っ子公園 | 西区 | 街区公園 |
前田トマト公園 | 手稲区 | 街区公園 |
幌西キッズ公園 | 中央区 | 街区公園 |
対象公園の現況や子育て中の保護者の公園に対するニーズ等を調査するため、全対象公園にて、それぞれヒアリングを行いました。ヒアリングは、直接多くの保護者の声を聞く機会を得るため、子育てサークルの開催時間に児童会館等に出向き、サークルに参加する保護者と一人ずつ対面方式で実施しました(写真1)。各対象公園のヒアリングの大要は以下の通りです。
・公園に求める要素は「子どもの遊び、発育の場」と「保護者同士の交流、情報交換の場」の2つが大半を占めた。
・キッズコーナーに求める要素や機能は、「安全・安心」、「のびのびと遊べる」、「幼児と保護者だけが利用できる」などが多かった(表2)。
表2 キッズコーナーに求めること(回答数597) | |
安全、安心な空間 | 24% |
のびのびと遊べる空間 | 22% |
幼児と保護者だけの空間 | 19% |
保護者が全体を見渡し易い空間 | 13% |
衛生的な空間 | 5% |
その他 | 17% |
・キッズコーナーにあったら良いと思う施設は、「滑り台」、「砂場」などが多く、幼児に因んだものでは「クッション性のある遊具・地面」、「安心して遊べる囲い」「おむつ替え台」等があった(表3)。
表3 キッズコーナーにあったら良いと思う施設(回答数836) | |
滑り台 | 17% |
クッション性のある遊具・地面 | 15% |
砂場 | 14% |
ブランコ | 13% |
休憩所 | 8% |
幼児用遊具 | 8% |
少数意見として | |
安心して遊べる囲い | 2% |
おむつ替え台 | 1% |
その他 | 22% |
キッズコーナーのプランニングにあたっては、事前ヒアリング調査同様、対象公園ごとに子育てサークルが行われている会場に出向いて、主催者の協力のもとワークショップを各2回程度開き、子育てする保護者との対話を重視しながら進めました。
具体的には、事前ヒアリングで得た情報を参考に本市が作成した2、3の素案を提示し、参加者に意見を述べてもらうとともに、キッズコーナーの配置や施設内容について話し合いました。なお、ワークショップ開催時には、幼児の世話役数名を帯同して保護者の見守りをサポートし、話し合いに参加しやすい環境を整えました(写真2)。
キッズコーナーの設計は、ワークショップで得た意見を可能な限り取り入れながら進めていきました。施設は、「乳幼児を対象とした遊具」、「屋根つきシェルター」、「キッズコーナー全体を囲む安全柵や生垣」、「犬猫の進入防止柵付きの砂場」、「乳幼児の歩行練習に利用できる手すり」、「おむつ替え台」などが採用され、1カ所あたりの広さ300~1,000㎡程度、事業費は1,300~1,500万円程度/カ所をかけて、平成21~23年度の間に10カ所の整備を行いました(図2及び写真3、4、5)。
対象公園の選定にあたっては、本市の子供育成に関わる施策を実施する部署の協力を仰ぎ、情報収集を行ないました。また、事前ヒアリング調査において、子育てサークルに直接出向いて保護者一人ひとりに対面方式で実施したこと、ワークショップ開催にあたっても、幼児の世話役を帯同して保護者が話し合いに参加しやすい環境を整えたことで、多くの保護者の声を直接聞くことができました。
キッズコーナーの整備後、幼児と来園した保護者に聞き取り調査を行ったところ、「安心して遊ばせることができる」、「幼児用遊具が多いのが良い」など、好意的な意見が大部分を占めました。特に、ほとんどのキッズコーナーで整備した遊具のすぐ近くの屋根付きの休憩所(シェルター、縁台またはテーブルベンチ)が、幼児に目が届きやすく安心して遊ばせることができることと、保護者同士のコミュニケーションの場所として重宝することから好評でした。
また、同聞き取り調査の際、「自宅から遠くても、広いキッズコーナーがある公園に行きたいか」との問いには、ほとんどの保護者が「行ってみたい」と答えていました。実際に、キッズコーナーのことを聞き、隣の地域から足を延ばして遊びに来ているという親子も散見されました。「この公園を利用する理由」に対する回答で一番多かったのは「近いから」であり、幼児を連れての長距離の移動が大変であるということから想定通りの結果と言えますが、前述のように、多少遠くても利用したいと思わせる魅力をもつ施設となっていることがうかがえました。
本市が平成20~23年度に行った街区公園の利用状況調査では、就学前の子供が公園を利用する時間は、午前中から小学生の下校時間までに集中しており、保護者へのヒアリングで、学童と一緒だと不安に感じているとの答えが多かったことを裏付ける結果となりました。このことについて、キッズコーナーのように、ほかの利用者と柵や生垣で分離したエリアを設けることは、幼児の安全確保や保護者が安心感を持てるという面で有効であるほか、幼児とその保護者が気軽に公園を利用できる時間帯が広がる効果も期待できます。
しかし、面積の小さい街区公園内にキッズコーナーを設けると、要望の多い「のびのびと遊べる空間」の確保や幼児用遊具の設置数にどうしても制限がかかってしまうことや、年齢が異なる多様な子どもとの交流の機会を奪ってしまうことなども、幼児や小学生の保護者を含めた関係者から指摘されています。
本事業は平成23年度をもって終了しておりますが、明らかになったメリット・デメリットについては、今後、新規造成や再整備において乳幼児を対象地とした広場を検討する際、参考にしたいと考えています。
札幌市 環境局 みどりの推進部 みどりの管理課 施設マネジメント