公園利用の可能性を広げる多様な取り組み

新宿区立新宿中央公園

カテゴリー:イベント運用 パークマネジメント 利用プログラム 利用指導 植物・施設管理

新宿区立新宿中央公園 写真

施設概要

所在地 東京都新宿区西新宿2-11
開設 昭和43(1968)年
面積 8.8ha
公園種別 風致公園
設置・管理者 設置者:新宿区 指定管理者:新宿中央公園パークアップ共同体

新宿区の区立公園では最大の面積を誇り、都庁を含む高層ビル群のビジネス地区にあり、大都会のオアシスとして親しまれて
いる緑豊かな公園である。かつて淀橋浄水場だった場所に新宿副都心建設事業の一環として、昭和43(1968)年に風致公園として整備された。昭和50(1975)年に東京都から新宿区に移管され、数回に渡って大規模な改修工事が行われた。現在の敷地面積は8.8ha である。

詳細

1.新宿中央公園の概要

一日の乗降客数360万人と世界一を誇る新宿駅から徒歩10分ほどの位置にあり、公園の東側は都庁を含む高層ビル群のビジネス地区となり、西側は住宅地区となっている。

一般財団法人公園財団と株式会社昭和造園、日建総業株式会社の3社が「新宿中央公園パークアップ共同体」として、指定管理にあたっている。
現在の指定管理期間は平成28(2016)年度からの5か年であり、指定管理者制度が導入されたその前の3か年も、( 一財)公園財団を軸とした共同体であった。公園管理事務所とフットサル管理棟に、常勤職員6人と非常勤職員20人ほどがローテーションを組んで勤務している。利用料金制の対象となる施設はフットサル施設のみである。イベント開催や物販による収益のほか、収益事業は自販機程度で、この収益は修繕費等の管理費に補填している。公園の出入り口が22か所あり、24時間利用される公園であるため不適利用も多く、夜間も4人体制で、1時間ごとの巡視を行っている。公園では、指定管理者が積極的に関与している「新宿中央公園を守る会」などのほか、計8つの団体・個人の方が公園サポーターというボランティアとして登録されており、園内では自然観察会などが開催されている。
公園利用者は、早朝の100人規模のラジオ体操や犬の散歩に始まり、日中は家族連れでの子どもの遊びやビジネスマン・OLの利用が多く、夕方以降はカップルの利用が増える。休日にはフリーマーケットなどのイベントが頻繁に開催され、イベントの申し入れや撮影等の占用許可申請も多い。特徴的な利用として、周囲に各種専門学校が多いため、演劇や音楽の練習なども常時行われ、留学生をはじめとする外国人も多く利用している。

2.公園利用の可能性を広げる取り組み
(1)目標等の設定

1)新宿区の目標像
新宿区では、新宿に集まる多様な人の持つ無限に広がる未知のエネルギーを「新宿力」と称し、この新宿力で創造する「やすらぎとにぎわいのまち」を目指している。新宿中央公園は区の公園のシンボルであり、都心のオアシスとして位置付けられている。

2)指定管理者による目標等の設定
「新宿エメラルドオアシスマネジメント」を管理運営のコンセプトとし、「公園のポテンシャルを最大限に引き出す」、「価値向上を図り、日本を代表する都市公園を目指す」を目標としている。
この実現に向けて、新宿の都心において季節の変化を花で感じる花の名所づくりを進める「四季彩プロジェクト」と、地域性を活かした賑わいと輝き、交流の場の創出を進める「にぎわい輝きプロジェクト」を推進した。

新宿中央公園平面図

(2)STAGE I これまでの取り組み(指定管理第1期、3か年の取り組み)

STEP 1 第一印象を変える(ハードの改善)

当初は、園内起居者の侵入や台車・荷物の残置を防ぐために園内各所に工事用バリケードが設置され、施設の汚損や不法投棄も多く、樹木も密集した状況であった。まずこの改善から着手し、工事用バリケードの撤去や、園内を3つの景観区に
分けて樹木の剪定や草刈りなどを行った。
施設管理では、優先順位を設けた計画的な修繕や、修繕履歴を蓄積した管理計画への反映などに取り組んだ。園内での路上喫煙も多かったため、新宿区とJT( 日本たばこ産業株式会社)との連携により、喫煙コーナーを再整備した。


樹木の整理(同一箇所)

STEP 2 不適切利用の解消
管理業務着手時における大きな課題は、園内起居者への対応であった。日中は67人が確認され、施設の占有や荷物の集積などが問題となっていた。
問題解決に向けて、毎朝声かけパトロールを実施し、区のみどり公園課をはじめ福祉担当、NPO団体などと連携・協働し、自立支援のための個別面談を行うなどの対策を講じた。これらの活動により、2年後には園内起居者はゼロになり、現在も維持されている。
ノーリードでの犬の散歩やフン等の不始末という利用マナーに関する問題も当初は多かったが、マナー教室の開催や継続的な利用指導により、目に見えて減少している。

園内起居者の撤去前後(同一箇所)

STEP 3 公園資源を活かした「にぎわいづくり」

次のステップとして、オフィスワーカーをターゲットとした自主事業に取り組んだ。約18万人の昼間人口がある副都心エリアの特性を活かし、ランチタイムに6台程度のケータリングカーを出店させ、周囲にテーブル席を設けるピクニックランチを実施した。また、通常三輪車の貸出を行っている水遊び場の外周園路を活用して、オモシロ自転車のレンタルを期間限定で行い新たなにぎわいを創出した。
花見のシーズンなどは利便性向上のため飲食売店の出店といったフードサービスや、園内に2台しかなかった自販機を11台に増設して、利用サービスの向上と収益拡大を目指した。フードサービスと自販機は現在も継続している。

STEP 4 地域と連携した「にぎわいづくり」

地域と連携したにぎわいづくりとして、西新宿の高層街区を束ねる「新宿副都心エリア環境改善委員会」と連携して「イブニングバー」を共催するとともに、様々な地域のステークホルダーと積極的に交流を図っている。
当初は、指定管理者単独の事業として開催したが、エリア内でも関心を集め、上記の委員会と協働し、現在は実行委員会方式で開催している。高層ビル群を眺めながら夜の公園を楽しんでもらうイブニングバー( ビアガーデン)は、夏の恒例行事として人気を博し、メニューや営業時間の見直し、専門学校との連携によるライブの開催などを通じ、これまで少なかった女性や若年層の利用拡大にも寄与している。
冬の取り組みとしては、周辺の高層ビルから公園が見渡せるという特性を活かし、地元の小学校の協力を得て、名誉区民である故やなせたかし氏にちなんだ、メッセージキャンドル4千本による地上絵を作成した。こうした取り組みを、地元や地域と連携して行っており、「地域から愛され、信頼されることが重要」との認識のもと、町会をはじめ、ボランティアなどと積極的なコミュニケーションを図りながら業務を推進している。

地域連携の概念図

STEP 5 広がる利用の可能性

これまでの活動により公園が大きく変わったことを印象づけ、様々なイベントや企画が提案されたり、持ち込まれたりするようになった。
その最大のものが「東京アウトサイドフェスティバル」で、ツリークライミングなどのアクティビティ体験やフードコートなど約80店が出店し、2日間で27,000人が来場した( 写真6)。このような大規模イベントは開園以来ほとんど皆無であり、トイレ不足などの課題も浮き彫りになったが、年々規模が拡大している。
最近では、初のフードフェスとして「大牛肉博」も開催された。周囲の企業が休みのゴールデンウィーク中で集客が心配されたが、5万人が訪れた( 写真7)。
新宿区では、アートの力でまちに新たなにぎわいと活力を生み出すことを目的に、例年区内各所で「新宿クリエイターズフェスタ」を開催しており、新宿中央公園も会場となっている。

(3) STAGE II これからの取り組み(指定管理第2期、5か年の取り組み)

1)取り組みの全貌と今後の目標等
これまでの取り組みと、今後の取り組みを整理すると、下図のようになる。
指定管理の2期目となる平成28(2016)年度からの5か年は、期間中に東京オリンピック・パラリンピックが開催されることもあり、訪日外国人の増加や健康志向の向上が予想され、また開園50周年という節目の年も迎えることから、これらに即した目標を設定して取り組みに着手している。

これまでと今後の取り組み

2)現在の取り組み
平成27(2015)年3月末に新宿区により、フットサル施設が整備された。施設の利用促進に取り組み、現在500を越えるチームが登録し、高い稼働率で推移している。多文化共生プロジェクトとして、フットサルを通じた多文化交流を実施している。フットサルの練習・試合や公園内のユニバーサルデザインのチェックや改善検討も活動内容に含まれている。
外国人に対するサービスとしては、来園時の情報提供の充実と、多言語での情報提供のためにスマートサインを導入している。新たな移動手段の確保や地域・観光の活性化、まちの回遊性の向上などを目的とした自転車シェアリングのサイクルポートも設置されており、24時間レンタルできる。
健康志向への対応としては、ノルディックウォーキングなどを毎月開催している。参加型の取り組みでは、子ども園の幼児と一緒に、土に花の種を混ぜた「たねダンゴ」の作成・植付けや、「グリーンアドバイザー」の協力を得て、ランチコーナーの草花装飾を行っている。
飲食サービスの充実として、既存の施設を使った新たな売店の開店(試行)や、ケータリングカーを保有してランチタイムにパークカフェを展開している。

今後の取り組みに向けて


 新宿区では、平成28(2016)年度から新宿駅周辺のまちづくりの核になる事業として「新宿中央公園魅力向上推進計画」の策定に取り組んでいる。この検討内容と連動しながら、指定管理者として取り組める施策などを今後計画的に展開していく。また、増加する各種イベントの申し入れへの適切な対応や、芝生の再生やアジサイ園の拡張など施設の整備・修繕も新宿区と協議し、計画的に行う予定である。

 

取材協力:新宿中央公園パークアップ共同体
(一般財団法人公園財団、株式会社昭和造園、日建総業株式会社)

上へ戻る