プラットフォーム戦略に基づく市民協働の公園づくり

沖縄奥武山公園

カテゴリー:市民参画

沖縄奥武山公園 写真

施設概要

所在地 沖覇市奥武山町52
開設 昭和34年6月
面積 28.26ha
公園種別 運動公園
設置・管理者 沖縄県

那覇市の中心部近くに位置する公園で、官庁街や商業の中心である国際通りともほど近く、那覇港とこれに注ぐ国場川に面している。
1973(昭和48)年に開催された復帰記念特別国体(若夏国体)の主会場として整備され、各種運動施設が整備されている。立地特性と交通利便性の良さから、スポーツのほか、数多くの集客イベントが開催されており、県民の憩いの場として親しまれている。
[主な施設]
陸上競技場、野球場、テニスコート、武道館、屋内運動場、弓道場、水泳プール、多目的広場、芝生広場、ジョギングコース等

詳細

1.公園の現状

奥武山公園は、運動施設が一通り揃った都市内に立地する公園であり、大規模イベントの開催から日常の健康運動やレクリエーション活動まで、幅広く県民に利用されている公園である。

奥武山公園全体整備計画調査業務住民意向調査より

公園の利用実態としては、利用者の半数以上は週1回以上来園し、2/3の人はスポーツや散歩、ウォーキングを目的に来園するという都市型の公園で、利用者からは、健康作りのための「からだに良い公園」として認識されている。

平成24(2012)年3月に実施したアンケート調査でも、公園のあるべき姿として「市民が気軽にスポーツに取り組める健康作りの拠点」が、整備が望まれる施設として「コース設定されたジョギング・ウォーキングコース」がそれぞれ1位になっていることで、これが裏付けられている(表1、表2)。

一方、この調査結果からは、「市民がゆったりと過ごすことのできる憩いの空間」や「花の名所など気持ちの良い施設」が望まれていることもわかり、「からだに良い公園」から心身共に満足できる「気持ちの良い公園」へのバージョンアップの必要性も確認された。

2.市民参加の経緯

公園内に立地する「沖宮(おきのぐう)」周辺で、沖宮奉賛会等の有志がツツジやアジサイなどを自主的に植栽するというボランティア活動が行われた。前述のとおり、「花の名所など気持ちの良い公園」が求められているという状況に鑑み、これを公園での市民参加の契機とできないかと考えた。

そこで、公園管理者( 県)から、公園でガーデニング等を行う愛好団体としての立ち上げを提案し、概ねの賛同を得て、月1回程度のペースで勉強会を行うことになった。
一方、県では「奥武山公園活性化検討業務」に取り組み、その中で、ガーデニングに関する需要調査なども行い、都市域に立地する奥武山公園周辺では庭付きの住戸も少なく、一定のニーズがあることが確認された。また、有償でのガーデニング活動に対しても一定数の希望者がいることが分かった。「有償」にこだわったのは、単なるボランティア活動ではなく、組織として

会員募集パンフレット

活動の原資を持ち、持続性のある取り組みを求めたためである。
こうした状況を踏まえ、公園管理部署・整備部署、指定管理者、市民団体の間で協議を重ね、「おうのやまガーデンクラブ( 以下ガーデンクラブ)」が組織された。
このプレイベントとして、500円/ 人を徴収する体験会を開催し、有償であっても実際に参加したい人がいるかどうかの確認も行ったが、約30人の参加があり、仕組みとして成立する感触が得られた。
有志による灌木の植栽が行われたのが平成26(2014)年4月頃であり、クラブの結成が27(2015)年9月と、わずか1年半足らずのうちにスピーディーに進められたのは、タイミングを逃すことなく、市民の参加意欲を形にしていきたいという意向があったためである。

3.おうのやまガーデンクラブ
( 1)設置目的

奥武山公園を市民の憩いの場、心身のリフレッシュをする場、庭づくり、景観づくり、野菜や蜂蜜等の物産づくりの場、多様な市民が学舎作業を共に行い、コミュニケーションが促進される場として活性化を図り、会員以外の来園も含めて広く市民及び地域に貢献する取り組みを公園サポーターとして展開すること。

(2)活動内容

○関係機関及び関係者との各種協議や調整
○活動計画及び予算の確保

○クラブの広報、会員の募集、寄付等の募集
○会員の管理及び会費の徴収
○個々の活動の企画、資機材等の調達、告知及び当日の運営
○経理業務、監査及び会計報告
○年次活動報告書の作成及び関係先への提出等

(3)参加方法と参加状況

入会金1,000円と年会費3,000円を支払ったうえで参加し、法人の場合は年会費10,000円を徴収している。活動資金としてはこの会費のほかに、沖縄の固有種であるクメノサクラの植樹時に1本当たり1万円の寄附をいただいたりしている。
入会は随時受け付けており、現在の会員数は法人会員も含め20人ほどである。
男女比は半々程度で、中高年層が多い。
事務局は沖宮内に置かれている。

(4)今後の見込み

現在は任意団体であるが、将来はNPO 法人などの法人へと移行し、より信頼性と安定性の高い事業主体となることを構想している。

会員数も、安定した活動に取り組むためには100人以上を目標にし、現在1社の法人会員も増やし、有給の事務局スタッフの雇用を目指している。
活動についても、植栽や管理作業のほか、展示会や講座の実施、視察旅行なども定期的に行っていきたいと考えている。

ガーデンクラブ運営スキーム

(5)運営スキーム

ガーデンクラブは、これまでみてきたように、独立採算制をとっている。これは、行政などからの補助金をあてにすると、予算が確保できなくなった時点で組織が維持できなくなることを恐れたのと、ボランティア活動だけでは将来的に活動規模が拡大した際に、事務局の業務負担が賄えない可能性を考えてのことである。
このため、会の運営スキームとしても、会費や協賛金などを原資として事業展開し、公園の魅力アップにつなげると共に、将来的には街のグレードの向上にも寄与していくことを期待している。

4.プラットフォームづくり戦略
(1)公園管理運営におけるプラットフォーム戦略の重要性

都市公園における市民参加を進めるためには、参加機会や場の提供、参加のルールづくり、様々な情報提供、コーディネートなどのトータルな環境整備が必要である。
具体には、ボランティア活動を行いたい人や求めている人の仲介、活動支援の制度や企業等の助成措置等の情報提供など、人と情報が交流し、新たな接点を生み出す場としてのプラットフォームの構築が求められる。

(2) 奥武山公園におけるプラットフォーム戦略

奥武山公園では、これまでみてきたような取り組みのほか、次のような展開がみられる。
1)ガーデニングの実践の場の提供
当初の植栽箇所のほか、沖宮と水泳プールに隣接した未整備箇所をガーデニング実践の場として提供している。ここでガーデンクラブ以外も含め、公募した市民による「みんなの庭づくりワークショップ」が行われ、コンセプトやゾーニングの議論がなされた。これを踏まえ、県では園路や散水施設などの整備に取り組んでいる。
また、次の展開として、公園の中央に位置する修景池の周辺もガーデニング活動の候補地として提供する予定である。

2)交流拠点の創出
「みんなの庭」の近くの未利用地に、コミュニティーセンターを整備中である。ここは、市民が集い、学び、共有し、実践する、そして発表し、評価しあえる場を目指しており、ガーデンクラブなどの市民参加活動の拠点となる場としても期待している。

具体の利用として、平日のサークル活動や部・学童の活動、休日のイベントや災害時のボランティア活動の拠点となることがイメージされる。
また、飲食施設の出店なども検討しており、こうした施設の管理にガーデンクラブなどが参画することで、活動資金を得ていくことも想定している。
この設計にあたっては、県内在住の若手建築家(40歳未満)を対象としたコンペを実施した。

奥武山みんなの庭整備イメージ

今後の展望

公園活性化のためのプラットフォーム戦略は、言い換えれば、プラットフォームの持続的進化が公園の活性化に直結するということである。この
ためには構築したプラットフォームの適切な運営が不可欠である。
本公園では、ガーデンクラブをプラットフォームの運営者として設定し、ルール整備や役割分担の明確化のもと、今後様々なサービスを提供していくことが期待される。
こうした取り組みは緒に就いたばかりであるため、行政と市民団体との適切な距離感を保ちながら協働を進め、これからの公園文化の醸成やまちづくりへの寄与につながっていくことが期待される。

取材協力:沖縄県土木建築部南部土木事務所(街路公園班)

 

 

 

 

 

 

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