「名古屋市公園経営基本方針」に基づくパークマネジメントプランの作成と実践

「名古屋市公園経営基本方針」に 基づくパークマネジメント

カテゴリー:パークマネジメント

「名古屋市公園経営基本方針」に 基づくパークマネジメント 写真

施設概要

所在地
開設
面積
公園種別
設置・管理者 名古屋市緑政土木局緑地部 緑地利活用室公園経営係

[公園整備の方針]
各地区の拠点となり、全市的利用も図られる公園として、東山公園、天白公園、猪高緑地、荒池緑地、船頭場公園などの大規
模な公園及び緑地の用地取得、施設整備を行っている他、歴史的資産を活かした魅力ある公園づくりや、身近な公園が不足す
る学区において、街区公園の適正配置促進事業を進めている。

[公園管理の状況]
都市公園法、同法に基づく命令、名古屋市都市公園条例、同施行細則等により行われている。平成18 年度より一部の公園に
指定管理者制度を導入している。また、公園の除草、清掃等を行う公園愛護会は約1,100 団体設立されている。

詳細

1. 公園経営基本方針
(1)作成の背景

名古屋市では、これまで、市内全域を対象に公園の配置計画を決定し、その整備と維持管理に努めてきたが、厳しさを増す財政状況を考えると、新たな公園整備や維持管理の充実は、容易に実現しにくい状況となっていた。
一方、社会情勢に目を向けると、人口減少や少子高齢化といった、時代の大きな変化にともない、ゆとりや心の豊かさの実現、都市のブランド力の向上、自然との共生といった成熟社会の実現が求められるようになっていた。また、都市化にともない、地域コミュニティにおける人々のつながりの希薄化が心配されるが、ボランティア活動や社会貢献活動といった形で、地域のまちづくりに積極的な市民や事業者も見られた。
こうした中、市民に一番身近な公共施設である公園について、これまでの歴史を踏まえながら、改めて名古屋の公園のあり方と今後の利活用の可能性について考えるべきと判断した。

(2)構成と内容

名古屋市緑の審議会に「公園経営について」を諮問し、同審議会公園経営部会の設置及び審議を経て、「公園経営のあり方」等基本方針に反映すべき事項の中間答申を受けた。
1)基本方針の位置づけ
平成23(2011)年度から平成32(2020)年度を計画期間とする「なごや緑の基本計画2020」で、3つのリーディングプロジェクトが掲げられており、このうち「Project 3今ある緑を可能な限り保全する~まもろまい!なごやの緑~」で位置づけられた「③都市公園の利活用の推進」を図るものである。

公園経営基本方針の位置づけ

2)これからの公園行政がめざす方向 これまでの公園行政は、公園をつくる、守ることに重きが置かれ、利用者の目線に立って公園を楽しいものにする、まちの魅力や賑わいの拠点にするといった育て、生かすことについては十分でなかった。そのため、経営的視点に立った、新たな公園の可能性を考えたものである。

公園経営への転換

3)公園経営のあり方
○基本理念
「公園から美しく魅力輝く名古屋を創造する
~ 利用者満足度の向上と名古屋の魅力アップ~」
○公園経営の3つの視点
視点1:みんなが関わりWin-Winの関係で進める公園経営
視点2:公園ごとの特色を育て、地域に生かす公園経営
視点3:取り組みの効果をつないで、新しい公園機能を生み出す公園経営
○「名古屋市の公園経営」とは
従来の行政主導による維持管理中心の公園管理から脱却し、利用者志向、規制緩和等による市民・事業者の参画の拡大、多様な資金調達とサービスへの還元、経営改善手法の導入など、公園の利活用重視の発想により公園の経営資源を最大限に活用していく新たな管理運営の考え方である。
名古屋市においては、市民ニーズを考慮した公園経営を第一とし、公園を「市民の資産」としてとらえ、多くの人々の関わりの中で、市民全体が公園経営の成果を享受できるように「管理する資産」から「経営する資産」へと公園の管理運営のあり方を大きく変革していくものである。

市民・事業者・行政の関係

2.公園経営事業展開プラン
(1)作成の背景と目的

「公園経営基本方針」に基づく具体的な取り組みを効果的に推進するために、優先的に取り組むべき課題と戦略的展開を「公園経営事業展開プラン」としてまとめている。
事業展開プランの推進により、市民や事業者が名古屋市とともに公園の管理運営の主役となって公園経営に参画することで、公園が真に“ 公=みんな”の公園となることを目指している。

(2)課題と戦略

公園経営基本方針を推進するためには、大きな課題が4つあり、これらの課題ごとに4つの戦略を立て、取り組みを進めている。

現状の課題と4 つの戦略

戦略①公園の特性を生かした公園経営の推進
公園ごとの管理運営に関する具体的な計画の「パークマネジメントプラン」や、各公園の特長などに関する基本情報をまとめた「公園カルテ」の作成が行われている。パークマネジメントプラン作成の対象となる公園は、広域の拠点となる公園や指定管理者により管理が行われている公園など、複数の条件を設定し、選定された48公園の内現在13か所が策定済み( 平成28(2016)年3月31日時点)である。公園カルテは1,400か所余りの公園全てで作成している。
戦略②市民・団体の参画・協働の推進
「市民・団体の参画の推進」「市民・団体の協働の推進」「協働ネットワークの拡大」の3つを軸に検討されている。
戦略③民間活力導入体制の整備
民間活力の発揮しやすい環境を整え、多様な社会貢献、ビジネス機会の提供を行っていくとともに、民間イベントの活性化による公園のにぎわい創りや、イベントの収益を公園サービスの向上に還元する仕組みづくりを目指す。また、指定管理者制度についても、民間事業者のノウハウを活用したサービスを効率的に提供するため、制度導入の拡大や運用改善が掲げられている。
戦略④公園経営の品質を高める評価の実施
実効性の高い公園経営を進め、利用者満足度を高めるため、市民満足度に市民の評価を加え、PDCAサイクルによる品質管理の実施を目指している。

(3)パークマネジメントプランの作成手順

パークマネジメントプランの作成手順

公園経営の現況評価

3.白鳥公園での実践
(1)白鳥公園の概要

「白鳥公園」は熱田神宮の近傍に位置し、昭和49(1974)年6月に開園された面積8.2ha の地区公園である。「南広場」「白鳥庭園」、旗屋町の「街
区公園」、白鳥町にある古墳のある「白鳥御陵」で構成されている緑豊かな大きな公園である。

(2)めざすべき公園像

歴史と文化の蓄積された土壌を持つ熱田において、歴史を生かした「文化の薫り高いまちづくり」の側面を担い、 国際会議場が担っている交流の場という特性を活かし、来訪者の満足度が高い公園を目指すべき公園像として「地域に伝わる水の物語を軸に、歴史と文化の交流が生まれる公園」という方針をたてた。

(3)現況評価と目標

評価項目に沿って評価し、今後10年間に目指すべき目標を設定すると下図のようになった。

公園経営の目標設定

目標設定

(4)取り組みの方針(抜粋)

1)景観形成の方針
堀川のプロムナード、サクラやヒトツバタゴの並木、園内のオープンスペース、白鳥庭園の非日常的な空間など、白鳥公園および周辺の良好な景観を維持し、活用していく。
2)運営管理の方針
施設利用者の満足度を高め、多様なニーズに応えるため、施設利用者の声を聴取し、反映できるものは積極的に取り入れる。また、白鳥公園の活用を進めるため、周辺地域との連携、市民・企業等とのパートナーシップを推進し、参加型の運営を目指す。また、公園内外の施設間の連絡を密にし、イベント等を協力して運営する。
3)連携・協働の方針
一般公園エリアでは、市民団体や企業との連携を進め、地域に根ざした公園を目指した管理運営を行う。現在、白鳥公園で活動しているボランティア団体のほか、NPO、市民等との協働事業を実施する。ボランティア活動の継続・充実を図り、公園をボランティアのメンバーや市民のコミュニティーの場( 地域のオアシス)として活用する。

(5)白鳥庭園での取り組み

「白鳥公園」の南側に一角を占める「白鳥庭園」は、文化の香り高いまちづくりの一環として整備され、面積約3.7ha と市内随一の規模を誇る日本庭園として平成3(1991)年4月に全面開園した。池泉廻遊式庭園で、名古屋を中心に中部地方の地形をモチーフにしている。園内には、本格的な数寄屋建築の庭園本館「清羽亭」、核となる施設として、「汐入の庭」があり、この庭を眺め休憩できる喫茶・休憩所「汐入亭」がある。

白鳥庭園平面図

1)指定管理者の取り組み
指定管理者として「岩間・トーエネック・みどりの協会グループ」が管理運営にあたっている。
平成27(2015)年度の事業報告では、入園者数の目標値12万人に対し、約15.1万人を達成している。
2)主な取り組み例
①庭園管理
毎年数回、造園家や樹木医などの専門家と園内を周り、植物管理等のアドバイスを受ける白鳥庭園アドバイザー制度を設けている。来園者の要望が多かった「樹木札」は、日本庭園としての美観の維持や写真撮影の妨げになるという問題もあるため、問い合わせの多い時期だけ可動式の樹木札を設置し、撮影の妨げになる場合は動かせるようにした。
②イベント
観桜会、観蓮会、ライトアップなど季節を感じられるイベントを開催し、市の許可のもと、夜間開園も行った。親子や子ども向けの講座や講習会のほか、寄席などの新規イベントに取り組んだ。

③市民参加
ガイドボランティアが40人程登録している。平成27(2015)年度は、ガイド技術のレベルアップと統一を図るため、ガイドマップづくりに取り組み、園内を13のエリアに区分し、危険箇所の洗い出しやガイドポイントのチェックなどを行った。
④周辺との連携
近隣にある名古屋学院大学の「みつばちプロジェクト」への協力や、地元の商店街や保育園、小学校などと協働し、「蝶とみつばちの飛ぶ熱田のまちプロジェクト」に取り組み、園内で花を育てたり、採蜜体験を行ったりしている。また、愛知県内や岐阜県の観光庭園7施設と連携して、「東海ガーデン王国」を展開し、緑化イベント等に共同で出展し、スタンプラリーを実施している。

今後の取り組み

今後も「公園経営基本方針」及び「事業展開プラン」に基づく事業展開を図る中で、名古屋市を取り巻く環境や社会情勢の変化に応じて取り組み内容を適切に見直していく。

 

取材協力:名古屋市緑政土木局緑地部緑地利活用室公園経営係

白鳥庭園管理事務所( 指定管理者)
「岩間・トーエネック・みどりの協会グループ」

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