体験教室を通して、コミュニティ文化を紡ぐ公園づくり

とちぎわんぱく公園

カテゴリー:地域活性化・コミュニティ 生物多様性

とちぎわんぱく公園 写真

施設概要

所在地 栃木県壬生町
開設 平成12年9月1日
面積 37.2ha
公園種別 総合公園
設置・管理者 栃木県(自治体、団体) (公財)栃木県民公園福祉協会

 とちぎわんぱく公園は平成12年9月に開園以来、野鳥や昆虫が生息できる環境づくりを行い、自然体験プログラムやオオムラサキの森づくり、ゲンジホタルの里づくりなど、公園を学校に、地域のボランティアを先生に「自然の学び舎づくり」を推進してきましたが、昨今の社会状況を踏まえ、公園の役割をさらに一歩前に進める必要があると考え、25年度から、人と野鳥・昆虫・動物の繋がりを縦糸とし、それぞれの縦糸を人と人がつながり横糸となって、わんぱく公園ならではの「体験教室を通してコミュニティを紡ぐ公園づくり」を行っています。

詳細

1,取り組み内容
(背景)

 当公園は、平成22年に「子どもたちが自然を学ぶためのパークマネジメント」で都市・地域局長賞を受賞し、24年度は153回の体験教室を開催し、約1万人の参加者があるなど、それなりの成果をあげています。しかし、子どもによるイジメや話し相手のいない独居老人の増大など、様々な社会問題が生じております。

 このような中、当公園の役割は従来どおりでよいのだろうか疑問を感じました。例えば、自然観察会「昆虫コース」ですが公園内で昆虫を探し、名前やどんなところに生息しているかを調べ、自分の体験として、個人に蓄積することで完結しています。すべて、参加者と野鳥・昆虫という具合です。

 今、子どもたちに必要なもの、それは、生命と向き合い、自然や友達を大切にする心を持ち、他人のことを思いやり、他の人のために何かをなすことを喜びと感じることだと考えます。また、高齢者も一人でいるよりも、言葉を交わし、一日一つの感動を得ることができれば、毎日が楽しくなります。

 幸いにも、公園には、季節を告げる様々な花、植物、野鳥、昆虫など自然がいっぱいあります。これらを介在に、子ども同士、子どもと高齢者等世代を超え、緩やかな交流を図る場所として公園ほど適切な施設はありません。従来の体験教室は自分と野鳥、昆虫など縦糸の関係ですが、この糸に、人と人とのつながりができる内容を加え、コミュニティの輪を広げ、一枚の布を織るような仕組みをマメジメントすることがこれからの公園の一つのあり方ではないかと考えました。

(事業概要)
・生物多様性の環境づくり

 子どもたちが自然を学ぶには、食物連鎖のピラミッドを公園内に実現し、それを日々観察し、体験させることが重要です。このため、田畑が広がっていた田園地帯を森にするため、伐採される運命にあったコナラやヤマザクラ、エゴなどの大木を重機移植し、短期間に平地林を作りました。

 芝生の原っぱから、2ヘクタールの冒険の湖、シデの林、カワセミブロックのあるトンボ池、オイカワや川エビが生息するせせらぎなど、多種多様な生息環境を造り、生息する生物の環境を考慮しながら保全しています。

 特に野鳥の生息地として、バードサンクチュアリを4箇所設定し、セイダカアワダチソウの実を食べるベニマシコのため、冬期間そのままにするなどを行った結果、ベニマシコが観察できたほか、カワセミやカイツブリが繁殖し、冬にはノスリが狩りをする姿も観察できるようになるなど、生物多様性の環境が作られ、良好に保全され推移していることが実感できます。

・体験教室を通してコミュニティ文化を紡ぐ

 当公園の体験教室は農業体験、自然体験、飼育体験、わんぱく地球っ子クラブふれあいプログラム、つくるプログラムの6つに大別されます。

 農業体験はわんぱく農園内の畑や水田で4歳から中学生までの子どもたちがコメ作り、野菜作りなどを体験します。これらの農作業は、仲間と助け合って仕事をしなければできないため、協同の心が生まれます。種まきから収穫までの期間、生育状況を観察しながら、植物の不思議さ、太陽や雨の力を識ることができます。

 自然体験プログラムは公園をフィールドに開催しています。24年度は森の学校「昆虫クラス」「きのこクラス」自然の学び舎「昆虫観察~ことはじめ~」「鳥の暮らしを考えてみよう」等を開催しました。

 わんぱく地球っ子クラブは地元文星芸術大学の林教授指導の下、宮沢賢治童話に基づく壁画制作を行っています。長さ3.6m、幅0.9mの板にスプレーで絵を描きますが、24年度は「セロ弾きのゴーシュ」を描きました。公園内で展示されたのち、栃木県総合文化センターや独協医科大学病院、自治医科大学子ども医療センターに展示され、入院している子どもたちを慰め、励ましています。

 従来の体験教室は子どもと野鳥、昆虫というように、他人との関係は希薄で、個人の中で完結してしまい、広がりがありませんでした。そこで、毎年実施していた森の学校「きのこクラス」では、今年度から、きのこ図鑑をつくることにして、毎回、公園内のきのこを撮影し、説明を書き、オリジナルのきのこ図鑑を作成することにしました。これは参加した子どもたちに自ら考え、行動した成果の達成感を味あわせるほか、きのこ図鑑を通して、訪れる子どもや大人にきのこの情報を伝えることにより、自然に親しむ機会を多くの人に与えることができるなど、小さな作業が大きく広がっていきます。

 また、従来の体験教室は子ども中心でしたが、高齢者の健康づくり、生きがいづくりに寄与するため、25年度から、平日に陶芸教室を開催していますが、毎回定員をオーバーするなど、人気がある講座になっています。公園にある豊かな自然や、花・野鳥などを題材に、陶芸教室、スケッチ教室、利用者による野鳥の写真展などを開催し、人と自然を縦糸とし、受講生同士のコミュニティや世代を超えた交流を横糸にして、わんぱく公園ならではのコミュニティ文化を紡いでいくことを行っています。

2,成果・効果

 コミュニテイ文化を紡ぐ作業はまだ緒についたばかりですが、例えば、きのこ図鑑づくりでは、年4回の観察会を実施しますが、既に終了した回では、班に分かれ、撮影・名前・特徴担当を決め、一生懸命図鑑作りを行っています。その真剣さは昨年の観察会と比較にならず、図鑑が完成した時には大きな喜びをもたらすものと思われます。子どもにとって、大変興味にある昆虫についても、図鑑作りを進めています。

 また、公園内で観察できる野鳥についても、日本野鳥の会とちぎの会員の協力により、野鳥図鑑制作が進められており、今年中には完成の予定です。この図鑑は園内の自然観察会に使用するほか、愛好家のバードウオッチングの際の資料として配布する予定です。さらに、大人向けの陶芸教室は、何を作っても構わないため、子どもを学校に通わせながら、空いた時間を有効活用し受講するお母さんたちは、家族のための食器を作ったり、花を飾る器や菓子鉢をつくっていますが、その姿は活き活きとして、時には真剣に取り組みながらも、非常に楽しい様子がうかがえ、参加してよかったという満足感が顔にでており、参加者同士の会話も弾み、コミュニケーションも順調に行われています。

3,課題・今後の展開

 子どもたちによる「きのこ図鑑」「昆虫図鑑」を完成させた後も、毎年、自然観察会を開催し、子どもたちの手で図鑑の内容の充実を図っていきます。特に野鳥図鑑は、真っ白なページを付け、新たに見つけた野鳥やトピックスの写真を張り付けるなど、マイ図鑑つくりができるようになっていますので、将来はマイ図鑑の発表会や野鳥写真展を開催したいと考えています。

 陶芸についても、園内にあるウメ、ツバキ、タケ、ススキなどの伐採した枝等を燃やし、当公園オリジナルの釉薬をつくることを考えております。 目指している将来のわんぱく公園の姿は、体験教室参加者が主体となって、自ら考え、行動し、公園を活き活きさせるとともに、わんぱく公園オリジナルのコミュニティ文化を創り、育てていくことです。

 そして、指定管理者である当協会は、脇役として、これらの活動の財政援助やサポートに徹するとともに、潜在的なニーズを的確に把握、反映し、様々な機会を提供することにより、利用者が様々な模様の織物を織り上げられるように、マネジメントすることを役割と考えます。

公益財団法人栃木県民公園福祉協会 とちぎわんぱく公園管理事務所

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