「キャッチボールのできる公園づくりモデル事業」その後と、ボール遊びの可能な公園への取り組み

キャッチボールのできる 公園づくり

カテゴリー:キャッチボール 利用調整

キャッチボールのできる 公園づくり 写真

施設概要

所在地
開設
面積
公園種別
設置・管理者

詳細

1. キャッチボールのできる公園づくりモデル事業について
(1)事業の概要

「キャッチボールのできる公園づくり」は、キャッチボール遊びを通して子どもの社会性の育成、ふれあいの促進、健康増進に役立てることにより、健全な青少年の育成に資するとともに、公園の利用促進の一環として、地域野球関係者をはじめとする公園を利用する側、公園を管理する側の双方において、公園でキャッチボールを行う場合の共通認識を高めることを目的として、キャッチボールのできる公園づくり推進会( 事務局は日本公園緑地協会)が設置され、地方公共団体等が、この趣旨に沿って行う取り組みに対し、モデル事業としてソフト・ハードの両面から( 社)日本野球機構等からの助成金を活用して支援を行った。

平成17年に募集を開始し、平成18年度から助成を開始、平成24年度までモデル事業が行われた。

事業の仕組み

 

(2)事業の内容

キャッチボールのできる公園づくりを推進する地方公共団体は、「キャッチボールのできるモデル公園」を設定し、目的を推進するために必要となるキャッチボール教室イベント等のソフト事業や、必要に応じてフェンス等の施設整備も含む計画を企画・立案し、助成事業に応募する。
この事業は、ルールづくりに関して地域が一体となって長期的に取り組むことを期待するものであり、一過性のイベントに終止することなく、2~3か年継続して実施することを要件として、その初年度に行う事業に対し、内容に応じ2コースに分けて助成を行った。助成は平成18年度から平成22年度までの5年間で、43団体( うち1団体は2回)へ助成を行った。現在は終了している。

 

Aコース:公園で開催する「キャッチボール教室」等、公園におけるキャッチボール遊びを推進するためのイベント等、ソフト事業に要する費用を助成( 助成上限:100万円)。

 

Bコース:Aコースのソフト事業に加え、安全にキャッチボールを行えるようにするための移動式フェンスや、キャッチボール遊具の施設に要する費用を助成( 助成上限:200万円)。
(3)事業の継続状況

43事例のうち、その後も事業を継続しているかどうか追跡調査を行ったところ、国営公園では、キャッチボール用具( グローブ・ボール)を貸し出し、園内での利用を許可している。市町村の公園では、印西市/ 松山下公園、益田市/ 万葉公園、松山市/ 平井公園、青森市/ 青森県総合運動公園、和歌山市/紀三井寺公園、彦根市/荒神山公園等で、防球フェンスや球打板等の施設が整備され、キャッチボールのできる環境が整えられている。また、春日井市/ 県営朝宮公園ではキャッチボール教室等のソフト事業がその後も継続されている。その他幾つかの公園では、常設のキャッチボール専用施設等の記述は無いが、周囲に迷惑を掛けない程度のボール遊びは可能とし、管理事務所等でボールなどを貸し出ししているケースもある。

2. 松山市の取り組み

今回は、事業が継続されている事例として、松山市の取り組みを紹介する。

(1)取り組みの概要

平成18年にキャッチボールのできる公園づくり事業に応募いただき、平井公園での「親と子のキャッチボール教室」からスタートした松山市では、その後も「ボール遊びのできる公園づくり」事業として、毎年1~2公園ずつ整備し、指定を進めている。特別な予算を組んでいる訳ではなく、公園緑地課の年間予算の中でやりくりしている。

松山市のボール遊びのできる公園

(2)整備までの過程

市内には330か所ほどの都市公園があるが、そのうち地元から要望があった12公園をボール遊び可能として指定している。要望の収集については、市長がタウンミーティングで市民からの提案を吸い上げたのち、公園緑地課で調整を行い、町内会及び隣接の住民から同意が得られた場合に、防球ネット、看板等の整備をし、ボール遊びの可能な公園として公表する。河野別府、久万ノ台緑地、白水台北公園は、既存施設のフェンスを活用している。
地域の要望がない公園を整備してボール遊びのできる公園としても、利用がなかなか促進されないため、現時点では市から整備を働きかける事は行っていない。基本的には要望があった公園については受け入れるが、広さが確保出来ない場合、立地条件や地域の事情等で指定を見送った公園もある。

(3)整備内容

敷地が広い公園は、多目的広場等をそのまま使用しているが、街区公園等の狭い公園には7m程度のネットフェンスを設置している。堀江中央公園は当初はフェンスの設置はせずにスタートしたが、ボールが公園外へ出てしまうという事で、28〜29年度でフェンスを増設することになった。星ヶ丘公園の場合は、ネットフェンスと干渉する樹木の伐採も行った。

星ヶ丘公園 整備前

古川西公園

星ヶ丘公園 整備後

愛光公園

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

整備開始当初は、既存の外周フェンスの上部へ増設する形で鋼製のネットフェンスを設置していたが、鋼製のものはボールが当たると音がうるさいという事で、近年はポリエチレン製の防球ネットを張るようにしている。愛光公園については、遊具エリアと近接しているため、遊具エリアとボール遊びエリアの境界部分に移動式の防球フェンスを追加で設置している。

 

星ヶ丘公園平面図

 

(4)愛光公園での取り組み

1)ボール遊びができるようになるまで
松山駅から徒歩で十数分の住宅地にある愛光公園は、面積が1,358㎡と、12か所の指定公園の中でも一番小さな街区公園で、平成26年にボール遊びができる公園に指定された。
公園が開園した当初は、周囲は畑だったが、近年は住宅や福祉施設が建設され、周囲の環境が変わってきている。以前は子ども達が路地裏でキャッチボールをする光景があったが、最近は子ども達が安全に遊べる場が少なくなってきている。味酒小学校の校庭は開放されておらず、学区内にある愛光公園、朝日ヶ丘公園、萱町公園、南味酒公園の看板にはボール遊び禁止と書いてあるが、子ども達はボール遊びをしており、公園周辺の民家の庭先や駐車場や畑にボールが飛び出してしまい、私有地に子ども達が侵入する事があった。
その様な状況を改善するため、平成25年3月と6月に、愛光公園管理協力会※、松山市公園管理協力会、市の公園緑地課、味酒小学校、中学校、PTA、青少年育成支援委員、愛光北町・南町内会、隣接する朝美町や美沢町町内会など、周辺の関係者が集まり、公園の運営管理についての話し合いを行った。
愛光公園に来る子ども達は、広場で野球やサッカー等をやるか、四阿でゲームをしていた。子ども達の健全な育成のためにも、ボール遊びをやめさせるのではなく、安全安心で楽しいボール遊びができる公園にするためには、どのように施設を整え、ルールを決めて運営していかなければいけないかを検討し、申請を行い、市が防球ネットと可動式フェンスを整備した。当初は既存フェンスより上の部分にだけ防球ネットを張ったが、フェンスにボールが当たるとうるさいため、下部にも防球ネットを追加した。

2)ボール遊びの現状
利用時間は、小学生以下は、1~3月は17時まで、4月~12月は18時までとしている。小学校や幼稚園とも協力してルールを作り、指導している。利用状況としては、平日の多い時は30~40人ほどが来園し、キャッチボールやサッカー、バスケットなどを楽しんでいる。また、愛光公園管理協力会会長の自宅倉庫にボールやグローブなどの道具が置いてあり、自由に貸し出し可能となっている。
子ども達が借りに来るが、信頼関係ができておりきちんと返却されるので、紛失は無い。

3)地域との協力
協力会としての公園清掃活動は週2回の当番制、それ以外に、会長さんは可能な限り公園へ出向き、子ども達を見守っている( 年間300日以上とのこと)。ルール看板は設置せず、声掛けでの徹底を図っている。最近はお互いが声を掛けられる関係が築けている。
ボール遊びができる公園づくりを進める中で、人の目が増え、交流が盛んになり、公園で防災訓練、お花見、餅つき( こどもの日)、御神輿、夏祭りなどが開催されており、地域のコミュニケーションを醸成させる場としても一役を買っている。以前は人の寄りつかない場になっていたが、そういった事も解消した。

 

今後の課題等

現時点では協力会会長のご尽力に頼る部分が大きいため、後継の育成を進めている最中である。また、防犯カメラの設置要望もあるが、個人情報等も絡むこともあり設置が難しいため、人の目による抑止力を期待し、周辺の住民には『出掛ける際は、公園の前を通るルートを使って』と呼び掛け、少しでも公園のことを気に掛けて貰えるような協力関係を築いている。

 

ボール遊びができる公園 最近の取り組み例
・千代田区:昨年度の事例集で紹介
・船橋市:公園でのボール遊びの可能性を検証するため、平成28年9月1日から11月30日までの3か月間、市内5公園で試行事業を実施した。
・大和市:「大和市子どもの外遊びに関する基本条例」を制定し、市内13公園に防球ネットを設置し、「ボール遊びもできる公園」とすることで、外で遊べる環
境の整備を進めている。

 

取材協力:松山市都市整備部公園緑地課、愛光公園 公園管理協力会

 

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