NPO法人と協働でつくる環境教育

今治西部丘陵公園(しまなみアースランド)

カテゴリー:民間活力 環境教育

今治西部丘陵公園(しまなみアースランド) 写真

施設概要

所在地 愛媛県今治市
開設 平成23年3月31日
面積 29.7ha(全体:34.9ha)
公園種別 総合公園
設置・管理者 今治市

 平成23年4月17日に開塾した今治自然塾は、平成23年3月31日に一部供用開始した今治西部丘陵公園(しまなみアースランド)内にあります。今治自然塾における環境教育プログラムは、今治西部丘陵公園(しまなみアースランド)内に設置された屋外環境教育施設において、緑の教室・裸足の道・地球の石・地球の道の4つの内容で構成されたプログラムを、インストラクターと共に体験し学ぶ形で実施しています。
 また、今治自然塾は、NPO法人「C・C・C富良野自然塾」の全面的な協力・監修の元で造られ、塾長である倉本聰氏によって考案された同環境教育プログラムを取り入れています。

詳細

1.背景・目的

  「今治自然塾」は、平成23年3月に開園した今治西部丘陵公園内に、同年4月17日、「今治自然塾宣言」を行い開塾しました。今治西部丘陵公園は、今治新都市開発の一環として平成16年に工事着手しましたが、同18年に工事を中断し、市民ならびに有識者による整備計画検討会が設置され、その計画を見直すこととなりました。そしてその検討会により、これ以上の開発・工事は止め、この地域に残された豊かな自然や里山の環境を守り、環境を学べる場へと活用をしつつ、様々な活動を通して人と自然の共生を深めようと、基本コンセプト「自然にいこい、体験を通じて、自然との共生を学び、里山の自然資源と環境を活かす公園づくり」を盛り込んだ「今治西部丘陵公園整備計画見直しに関する提言」が提出されました。

  これを受けて市は、造成済みであった土地を含め、今の環境をできるだけ残したまま、もっと積極的に自然に関わり環境を学べる、特徴ある公園づくりを模索していました。この時、縁あって、著名な脚本家・倉本聰氏を塾長とするNPO法人「C・C・C富良野自然塾」(以下、「富良野自然塾」)の活動を知り、平成20年には倉本塾長自らが今治西部丘陵公園を訪れ、公園の景色や残された自然に多くの発想を得て、数枚のスケッチ画を描き、これが「今治自然塾」の原案となりました。「富良野自然塾」は、一年中プログラムを実施できる瀬戸内の温暖な気候と西日本での活動の場を確保、今治市は「富良野自然塾」のプログラムを取り入れて環境教育を実施できる特徴ある公園づくりという両者の思いが一致して協働の第一歩を踏み出し、日本で2番目の活動となる「今治自然塾」の開塾へと至りました。

○今治西部丘陵公園「今治自然塾」開園・開塾までの経緯
2004年 造成工事着手
2005年 1月 新・今治市誕生(12市町村合併)
2006年 工事中断
2008年 2月

8月

 

10月

今治西部丘陵公園整備計画見直しに関する提言

倉本塾長今治視察

今治自然塾基本設計委託

インストラクター養成

2009年 環境教育プログラムコース工事開始
2011年 3月 今治西部丘陵公園一部開園
4月 今治自然塾開塾「今治自然塾宣言」
2.取り組み内容

  自然塾の中心となる活動は、環境教育プログラムの実施です。環境教育プログラムの内容を以下に紹介します。

①緑の教室

  人間を含む動物は、“酸素”と“水”なしでは生きられません。この二つに“葉っぱ”が深く関わっていることをお話します。

②裸足の道

  人間には“五感”があります。しかし、現在の私たちは“視覚”に頼って生活できるようになってきています。その視覚を閉ざし、裸足で砂、草、丸太、落ち葉等様々な素材で作られた道を歩き、視覚以外の感覚を呼び覚まします。

③石の地球

  私たちが住んでいる地球の構造、海、陸地のことや、激しいスピードで消滅しつつある熱帯林の現状、さらに地球が程よい大きさと太陽までの距離、その素晴らしい偶然が生み出した“奇跡の星”であることを学びます。

④地球の道

  46億年の地球の歴史を、460mの距離に置き換えて歩きます。過去に起こった灼熱や凍結の時代、生物の誕生と進化、石炭や石油など化石燃料の生成等を見つめつつ、余りにも短い人類の歴史と、その中で私たちが“してしまったこと”を探ります。

  以上4つのプログラムを、インストラクターと共に体験し、自分自身の五感を通して実感し、考えるきっかけとなる所要時間約2時間のプログラムです。

  「富良野自然塾」のフィールドディレクターの斎藤典世氏には、何度も今治を訪問していただき、市と協働で「大島石」の配置やモニュメント作成等コース整備に関係する具体的な指示、監修やインストラクター養成指導を手伝っていただきました。インストラクターは、「富良野自然塾」において一定期間の指導を受け、合格した4名が「青い地球推進係」として務めています。

3.苦労・工夫した点

  今起こっている環境問題は、私たち人類が起こしてしまった大変重大な問題ですが、その内容は多岐にわたり、専門家の話を聞いても複雑で難しいし、本やインターネット等から得られる情報は、知識としては覚えられますが、果たしてそれを自分自身の問題として危機感を持って考えられているだろうかという疑問が残ります。

  自然塾の環境教育プログラムは、そんな疑問を持った倉本塾長が書き上げたシナリオに沿ってインストラクターが物語を進めていきます。そのシナリオは、環境問題の専門家ではない脚本家・倉本聰氏が、様々な研究を基に書き上げた科学者たちの壮大なドラマのような展開があり、インストラクターに求められる資質は、環境に関する知識だけでなく、それを人に伝える能力が最も必要とされます。

  インストラクターは、ただ機械的に施設の説明や環境問題の解説をするのではなく、今の環境の厳しい状況、対策への取り組みの重要性、未来への警鐘など、人にその“思いを伝える”ことを最も重要視しています。表現とコミュニケーションが、プログラムを行うインストラクターの大きな要素と言えます。これが、分かっているようで非常に困難なものでありました。

  また、倉本塾長のスケッチ画が原案となったプログラムコースでは、墓石の原材料として有名かつ今治の地場産業でもある「大島石」が使用されており、天然の石が今治自然塾のコース独特の不思議な空間を作り出しています。これら大島石の並んだコースは、「富良野自然塾」にはない「今治自然塾」のコースの特徴となっており、体験者の想像力を刺激する舞台設置となっています。

4.効果・成果

  平成23年4月の開塾から平成25年7月までの2年3カ月で、このプログラムを体験したのは一般(高校生以上3,028人、小・中学生3,989人、合計7,017人となっており、特に今治市教育委員会の協力を得て、市内のほとんどの小学5年生に体験していただいています。すべての体験者は、体験終了後にプログラムを受けて感じたことを振り返るためのアンケートに協力していただいており、どこか他人事であった環境問題を自分の問題として考え、できることから始めようとするきっかけとなる等の言葉をいただき、このプログラムの意義を理解していただいた成果としてうれしく思っています。

5.課題

  今後、この環境教育プログラムを多くの人に体験していただくことが最も重要な課題であります。そのためには、インストラクターのスキルアップ、増員を含め、その他の様々な体験プログラム等の構築を進めて、西日本だけでなく日本全国や世界中から“ここでしかできない体験”のために来てもらえる公園としていく必要があります。また、指定管理者への移行に向けての準備も課題の一つとなります。

6.今後の展開

  「今治自然塾」のプログラム拡充を図ります。平成24年11月から0~5歳の乳幼児を対象にした環境教育プログラム“森育”を開始し、今治市内幼稚園、保育所、子育てサークルの単位で体験を受け入れています。野草・山菜採集、園内の落葉を利用しての腐葉土作り等、しまなみアースランドの四季折々の豊かな自然を活かし、今後も体験を展開していきます。

  また、平成24年3月に供用開始した学習棟を有効活用し、環境教育プログラムを中心とした環境をテーマとしたイベントや研修等を頻繁に開催し、「今治自然塾」でしか体験できないプログラムの開発や、「しまなみ海道」の景観を生かしたイベント等の連携をはかり、「環境」と聞けば「今治自然塾」というような、世界中から知られるような公園としていきたいと考えています。

今治市 都市建設部 公園緑地課

 

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