県営都市公園経営基本計画 小笠山総合運動公園「エコパ」

公園経営計画とパークマネジメントの実践

カテゴリー:パークマネジメント

公園経営計画とパークマネジメントの実践 写真

施設概要

所在地 静岡県袋井市愛野2300-1
開設 平成13(2001)年
面積 269.7ha
公園種別 広域公園
設置・管理者 設置者:静岡県 指定管理者:静岡県サッカー協会グループ

平成14(2002)年開催の日韓ワールドカップの会場のひとつとして計画された公園で東海道新幹線や東名高速道路にも近い、丘陵地に位置する。
[主な施設]
エコパスタジアム、補助競技場、エコパアリーナ、サブアリーナ、人工芝グラウンド、多目的運動広場、芝生広場、グラウンド、ふれあいの森、駐車場など 

詳細

1. 県営都市公園経営基本計画について
(1)公園経営計画の概要

1)計画作成の経緯
静岡県には7ヶ所の県営公園があり、この全てに指定管理者制度が導入されている。そのそれぞれに特色ある公園づくりが進められてきたが、利用者数の低下が見られるなど、利活用の促進が課題となっていた。
このため、保守点検中心型の管理運営から利活用を中心とした経営型の管理運営への転換を図るべく、平成15(2003)年3月に「県営都市公園経営基本構想」を、翌年に「県営都市公園経営基本計画」を策定した。なお、基本構想は10年を、基本計画は5年を目処に改訂することとし、平成26(2014)年7月に現行の基本構想、基本計画が策定されている。この改定では、公園を取り巻く社会経済情勢の変化を反映させ、特に「安全・安心」を目指した公園管理を基本方針に追加している。
2)基本構想の内容
策定当初に提言された内容としては、民間活力の導入、外部評価制度の導入、利用料金制の導入などがあり、具体的には、「利活用を中心とした経営型の管理運営」、「施設の適正な維持管理」、「安全・安心を目指した公園管理」の3つを基本方針として掲げている。
さらに基本構想の目的として「利用者満足度の向上」、「効率的で効果的な運営」、「利用の増進」、「安全・安心の確保」を定め、この方針、目的を踏まえ、公園ごとに設置目的や役割・位置づけを明らかにし、目指すべき方向性が打ち出されている。
3)基本計画の内容
基本計画は、基本構想を実現していくための行動計画として策定されている。
計画の特徴として次の5点がある。

①パークマネジメントの考え方を導入し、公園運営のあり方を保守点検型の運営から利活用を中心とした経営型の運営に転換していく方針を示した。
②目的達成のための経営努力目標を設定し、その指標として年間利用者数、利用者満足度、マネジメントコスト比率の3つを公園ごとに数値で設定した。
③戦略、重点施策の設定、アクションプログラムを策定したが、重点施策は各種施策の中から早期かつ重点的に実施する施策を、優先度をつけてピックアップした。
④計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、見直し(Action)のマネジメントサイクル( PDCA)を導入し、その評価に外部評価制度を導入することを盛り込んだ。
⑤基本計画を着実に推進していくために、市町村や利用団体など、公園利用者や関係機関と連携する体制を整備した。

PDCAサイクルを踏まえた計画の進め方は次図のとおりである。

(2)外部評価制度について

平成17(2005)年度から県営公園に指定管理者制度を導入するにあたり、前項でも記述したように、全ての都市公園の指定管理者に対して外部評価制度を実施している。
評価方法は、業務の実施内容の管理運営評価(一次評価)と、公園の公益性や設置目的との適合性の評価( 二次評価)の2段階に分かれている。
一次評価では、公園の設置目的や業務体系等を記した「パークマネジメント・カルテ」に基づき、指定管理者による自己評価や県による事業診断を行うほか、来園者に対するアンケート調査や職員モニタリングによる評価を行っている。
二次評価では、都市公園モニターによる県民からの評価を加え、一次評価結果データを併せて外部有識者からなる評価委員会で意見交換し、機能ごとに「A+」から「C-」までの9段階と文章で総合判定し、具体的な改善点などを指摘している。
なお、評価結果については、県のホームページなどで公開している。

2. 小笠山総合運動公園をモデルとしたパークマネジメント
(1)管理の概要

指定管理者として静岡県サッカー協会グループ( エコパハウス)が、平成22(2010)年度からの2期目、5ヶ年の指定管理期間の5年目として管理している。指定管理料は約610百万円である。
管理部署は、営業企画部と管理部に分かれ、営業企画部では運動施設等の貸出や管理、イベントの誘致や企画などを行い、管理部では中央監視や園内の自然の管理、設備点検などを行っている。
管理体制は、公園面積が大規模で、維持管理が大変であるが、地元造園業者と近隣2市のシルバー人材センターと契約して作業を進めている。スタジアムの芝生など、高度な管理を要する施設では専従スタッフを置いて、毎日の点検や水やりなどを行っている。

(2)公園経営計画におけるエコパのビジョン、戦略展開等

県営公園経営基本計画では、公園ごとの設置目的や役割・位置づけが明記され、これを実現するための戦略項目や具体の戦術、利用者数等の数値目標などが示されている。
1)ビジョン
<設置目的>
ワールドカップサッカーや国体を開催したトップレベルの競技施設を活かして、「本県スポーツの殿堂」とするとともに、健康づくり、文化・レクリエーション及び自然と親しむ場としての公園運営を目指す。
<役割・位置づけ>
スタジアム・アリーナ :「本県スポーツの殿堂」として、県の頂点となる競技を誘致、開催するとともに、コンサートをはじめとする大規模イベント 会場としての利用も図る。
芝生広場、園地等 :県民の健康増進やレクリエーションの場を提供する。
森林エリア :小笠山の豊かな自然とのふれあいを楽しむ機会を提供する。
2)戦略
・本県スポーツの殿堂としての役割を強化
・地域利用・多目的利用、地域連携の促進
・利用者サービスの向上
・安全・安心の提供
3)機能
・県の頂点となる大会の開催
・地域利用・多目的利用の推進、企業との連携等
・利用者へのサービス向上、公園の魅力の広報等
・安全安心で快適な施設の提供
4)戦術
・国際大会等優先順位の高い競技会の誘致等
・アウトドア系プログラムの提供、文化イベント等による活用等
・利用しやすい利用時間、料金の設定等
・マニュアル整備、訓練実施、ユニバーサルデザインの推進等

(3)エコパでのパークマネジメントへの取り組み

1)利用促進
①自主事業
公園利用者数は、外部評価の重要なポイントとなるため、スポーツ以外に自然や文化・食などに関連する多様な自主事業に取り組んでいる。
②イベント誘致
国際大会、全国大会、プロスポーツの公式戦などの誘致に取り組んでおり、近年では国際陸上競技大会やJリーグの公式戦などを開催している。
③その他
近隣の幼稚園や小学校などを積極的に訪問し、スタジアムの見学ツアーなどを紹介し遠足や校外学習などでの利用を呼びかけている。また、公園内で中学・高校の駅伝県大会が開催されていることもあり、校内マラソンや持久走の大会利用が盛んとなり、20校以上の実績がある。
2)利用者満足度の向上
指定管理者自らが、施設利用者や自主事業への参加者に対するアンケート調査を行い、公園利用者の意向把握に努めている。

(4)外部評価の実際と結果等

平成26年度は以下のような外部評価が行われた。

外部評価の実施内容等 
区分 実施内容 説明 実施期間
パークマネジメントカルテ 設置目的から個別業務内容までを構造的に示した作戦体系図を作成し、業務ごとに年間目標値を定めた。 平成26年5月~7月
外部評価アンケート 公園の基礎的な管理項目と来園目的に対する満足度を5段階で調査した。県営7公園の利用者を公園現地で無作為抽出し、対面式・回収式で調査した。 10月~ 11月
一次評価 パークマネジメント・カルテの実績、外部評価アンケート、職員モニタリングを基に、評価基準に従い客観的に数値化した。 11月
モニター調査 県営都市公園の課題や利用者の潜在ニーズを把握し、戦略策定に活用するために、中立の立場にある利用者にグループインタビュー方式で調査した。 10月~ 11月
公園現地視察・指定管理者へのヒアリング 外部評価委員による現地視察及び指定管理者へのヒアリングを実施した。 10月~ 11月
二次評価 Ⅰ~Ⅴのデータに、県営7公園の公益性や設置目的との整合性に関する外部評価委員の知見を加えるとともに、委員による公園の視察結果を基に評価を総括した。 平成27年1月~2月

1)パークマネジメント・カルテに基づく評価結果
外部評価では、詳細な業務内容ごとに目標値に対する実績値を示したカルテを作成し、評価されることになっている。
2)二次評価(総合評価)
二次評価では、9段階の評価に意見が添えられ、改善事項が指摘される。

今後の展開

今後も、外部評価で指摘された具体的な改善点などに基づき、指定管理者の管理運営の指導に活用していく。

取材協力(平成27年):静岡県交通基盤部部市局 公園緑地課都市公園管理班

 

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