「森の学校」 市民協働による森づくり

堺自然ふれあいの森

カテゴリー:市民参画 民間活力 環境教育 生物多様性

堺自然ふれあいの森 写真

施設概要

所在地 大阪府堺市
開設 平成18年4月2日
面積 17.2ha
公園種別 都市公園
設置・管理者 堺市

 堺自然ふれあいの森は、平成18年4月に、市民協働により豊かな自然環境や多様な生きものの生息空間を保全し、「森の学校」として自然とのふれあいや里山文化を伝承する場として開園しました。現在は市民ボランティアが中心となって里山の保全整備を行っています。また、園内唯一の建物である森の館では、常駐するレンジャーが森の楽しみ方の紹介や四季折々の自然情報について解説したり、市民ボランティアと様々なプログラムを実施しており、市民の方々が気軽に自然とふれあえる場作りを行っています。

詳細

1.あゆみ

  堺自然ふれあいの森(以下、ふれあいの森)は、堺市の緑のシンボルエリアである「南部丘陵」に位置し、市民協働により豊かな自然環境や多様な生きものの生息空間を保全し、「森の学校」として自然とのふれあいや里山文化を伝承する場として、平成18年4月に開園しました。

  そこから遡ること平成3年(~4年にかけて)、当初は堺市が墓地拡張用事業用地として17.2haの敷地を取得したものの、開発されないまま平成12年に環境保全へと方針が変更されました。そして、平成13年に「(仮称)自然ふれあいの森管理運営に関する検討会」が設置され、翌年公募で選ばれた堺市民30名を中心とする「(仮称)自然ふれあいの森管理運営準備委員会」が発足しました。この委員会は、その後「NPO法人いっちんクラブ(以下、いっちんクラブ)」に改称し、現在ふれあいの森で市民ボランティアとして調査・研究活動、農作業体験活動、樹林管理活動、クラフト活動、環境学習活動、広報活動を行っています。

  また、開園と同時に指定管理制度が導入され、施設管理業務と、イベント等の企画運営や来園者および団体対応等の運営管理業務を担うと共に、市民協働を円滑に進めるため、市民ボランティアの日々の活動に対する調整や連絡等の後方支援も行っています。

2.設備概要

  ふれあいの森の敷地には専門のレンジャーが常駐する森の館があり、森の楽しみ方の紹介や四季折々の自然情報についての解説を行っています。また館内には見所を紹介する自然情報ボードをはじめ、楽しみながら自然について学べる展示、森で見つけた生きものを調べるのに役立つ図書コーナー、休憩スペース、多目的トイレ等が設置されています。

  森の館の屋上から続く木道はバリアフリー設計で、ベビーカーや車椅子の方も気軽に森を散策することが出来ます。高い位置にあるため、耳を澄ますと虫や鳥の声が良く聞こえ、樹木の葉や実も間近に見ることが出来ます。また園内には市民協働で作られた散策路や広場が整備され、四季を通して様々な動植物を観察することが出来ます。散策路では自然とふれあうきっかけ作りとして、季節の動植物を題材にしたクイズラリーを常時実施しています。季節や天候、大人から子供まで年齢等に関係なく、どなたでも気軽に自然とふれあえる設備となっています。

3.保全整備概要

  ふれあいの森の敷地の約70%は傾斜地で、コナラやリョウブなどの落葉広葉樹とシリブカガシやアラカシ等の常緑広葉樹の混交林となっています。尾根筋は、かつてはアカマツ林でしたが松枯れの影響でソヨゴ・クロバイ等の中低木林となっています。残りの約30%は放棄された農地でネザサが繁茂し、セイタカアワダチソウ等の帰化植物が進入している区域もあります。これらを大きく3つのゾーンに分け、それぞれ、①里山の入り口にふさわしい自然を復元する「里山復元ゾーン」、②多様な活動を通じて自然の機能を回復・維持・増進する「里山活用ゾーン」、③自然の回復、維持、増進を優先させる「里山保護ゾーン」として維持管理を行っています。「里山活用ゾーン」は、更にアカマツの実生を移植し育成する「アカマツ再生区」、コナラなどの落葉樹主体の里山林として整備する「里山風景区」、カヤネズミ等の生息環境を維持する「ススキ再生区」などに細分化され、毎年策定される森の整備計画に基づいて整備されています。そして、これらは「市民協働による森づくり」の取り組みの一つとして、森の整備計画の検討から実際の作業までを市民ボランティアが中心となって行っています。整備中に切り出された間伐材は、園路の階段や杭の資材、クラフトの材料などとして、落ち葉も堆肥として利用するなど、里山の資源の循環にも積極的に取り組んでいます。

  このような保全整備活動は、堺市の関連部署、指定管理者、NPO法人いっちんクラブ、アドバイザーの大阪府立大学の教授が出席する、活動方針の確認や報告等を行う月1回の運営会議と、年1回森の整備計画会議上で意見交換や協議が行われ、日々の作業に反映されています。

4.成果・効果

  平成24年度の利用状況は小学校や幼稚園・保育所、福祉施設等の団体利用が来園者の7割以上を占めており、その中でも、堺市内の小学3年生(昨年は22校)が春や秋の遠足シーズンを中心に、自然観察や工作のプログラムを中心に利用されています。その他の団体についても、既存のプログラムから選択するだけでなく、レンジャーが直接担当者から要望を聞き、対象年齢や人数構成、興味・関心に応じたオーダーメイドのプログラムを提供しています。

  一般来館者に対して提供する環境教育プログラムについては大きく分けて4つの特徴があり、田植えや農作物の収穫、間伐体験、草木染などの「里山文化に触れる」プログラム、生きもの探しや自然工作、森遊び、森の音楽会などの「自然と触れ合う」プログラム、動植物の観察会、シンポジウム、講演会などの「自然や環境について理解を深める」プログラム、環境教育指導者養成講座、里山保全ボランティア養成講座などの「自ら行動する」ためのプログラムなどを開催しており、乳幼児から親子連れ、自然環境や里山文化について深く学びたい方まで、より多くの方に、自然とふれあう環境学習の機会を提供できるように取り組んでいます。

  併せてプログラム参加者や一般来園者に聞き取り調査を行い、市民の方々のニーズに合わせたプログラムを企画し、来園者の満足度向上に努めています。その結果、昨年は1万人以上の方がプログラムに参加し、開園以降初めて年間来園者数が3万人を超えました。また、開園7年目になる今年8月、来園者総数が20万人を超え、「森の学校」として来園者の方々に自然とのふれあいの場を提供しています。

5.課題及び今後の展開

  現在抱えている課題は複数ありますが、その中でも「認知度の不足」は課題の一つです。現在でもホームページやfacebook、twitterなどを始め、堺市が発行している広報紙、図書館や公民館でのチラシ配架、地域情報誌等で広報を行っているにも関わらず、区民まつりや大型商業施設等で出張展示を行うと「初めて知った」「堺市にこんな場所があるのですね」との声を聞きます。そのため、今後も引き続き認知度を向上させるための効果的な手法を検討し、多くの市民にご来園いただき、自然とのふれあいと理解を深めることにより環境意識が高まり、自然と共生する持続可能な社会づくりに貢献したいと考えます。

  今後は次世代に引き継ぐため、里山の保全整備と「森の学習」の一体化を促進させ、認知度向上に伴う来園者数の増加と市民協働の取り組みとして、来園者自身が主体的にふれあいの森の様々な活動に参加するための仕組みを整備していきたいと考えています。また周辺地域の関連施設や学校、住民との連携を強化し、地域活性化の中核施設として機能出来るように努めていきたいと考えています。

堺自然ふれあいの森

 

 

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