治水機能を持つ公園の管理運営

大阪府営深北緑地

カテゴリー:安全対策 防災・減災

大阪府営深北緑地 写真

施設概要

所在地 大阪府大東市深野北4 - 284
開設 平成3(1991)年
面積 41,000m²
公園種別 総合公園
設置・管理者 設置者:大阪府 指定管理者:深北緑地パートナーズ(ミズノ(株)、西武造園(株)、(株)地域環境計画)

大東市と寝屋川市にまたがり、周囲は堤防で囲まれている。その一部に越流提が設けられ、寝屋川の水位が上昇した時は公園内に水を流入させる治水緑地でもある。
主な施設
芝生広場、桜の園、バーベキュー広場、とりで広場、恐竜広場、ロケット広場、深野池、水辺の観察エリア、自由広場(マウンテンバイク・BMX専用)、波の広場、スケートボード・ローラースケート専用)、球技広場、テニスコート、軟式野球場、ドッグランなど

詳細

1. 公園の概要
(1)公園の概要

深北緑地は、家族で遊べる広場や、子どもが楽しめる遊具、スポーツができる施設が混在しており、幅広い層が利用できる公園である。年間約87万人の利用者があり、この5年間で2~3万人ずつ利用者が増えている。
平成21(2009)年度より指定管理者として深北緑地パートナーズが管理している。構成団体は代表企業のミズノ( 株)がスポーツ施設運営、トータルマネジメント、西武造園( 株)が植栽・施設等の維持管理、安全管理、( 株)地域環境計画が動植物調査、地域連携、広報、自主事業を行っている。約40名で日常の公園管理を行っている。

 

(2)治水緑地としての公園

寝屋川水系の洪水被害を防ぐため、公園事業と河川事業の共同事業により、一級河川寝屋川の洪水調整機能を備えた公園として整備された。平常時は「憩いの場所」として、大雨や台風等の災害時には遊水池として「地域を水害から守る」という二つの役割を持っている。

2. 越流から復旧まで
(1)越流時の対応

台風や、異常気象等により越流の可能性がある場合、指定管理者は公園設置者の大阪府枚方土木事務所や河川管理者の寝屋川水系改修工営所、警察、消防などと緊密に連絡をとり、越流に備えて水防体制を整える。越流したゾーンから管轄が土木事務所から河川管理者へと移り、貯水した水の排水が終わるとそのゾーンの管轄は土木事務所に戻る。

管理事務所では、警戒水位の3.5mを超える可能性のある時、直ちに水防体制をとり、水位に応じて人員を増やして対応している。3.9mを超えると利用禁止措置をとるため、園内放送で園外への退出を呼び掛けるとともに、安全管理のため2班で園内33か所に利用禁止の掛け看板をかけ、人が入らないようにゲートを閉鎖する。
越流した水は、遊水池としてA ゾーン、B ゾーン、C ゾーンと順に流れ込んでいく。

園内に最大146万㎡水量を一時的に貯めることができる。寝屋川の水位が下がり、洪水の危険性がなくなると水門から寝屋川へおよそ2日間かけて自然排水される。
開園から24年間で計4回、C ゾーンまでの浸水が起こっている。

(2)平成24(2012)年、平成25(2013)年の大規模越流での対応

平成24(2012)年8月と平成25(2013)年9月にC ゾーンまで浸水する大規模な越流があった。それぞれの降雨範囲や大阪湾の潮の満ち引き等によって、越流にいたるまでの寝屋川の水位変動や越流時間は異なり、その後の復旧の対応にも違いがあることが分かった。

1)平成24(2012)年8月14日( 集中豪雨型)の対応
早朝の記録的な集中豪雨により、通常水位から越流推移まで1時間あまりで上昇した。急激な水位上昇に対して、速やかな水防体制を整えた。園路には、汚泥や流木などの多くの漂流物が堆積し、池の人止め柵や仮設橋の桟橋に流動したヨシ帯がぶつかり破損した。復旧作業では、障害物の撤去や洗浄作業を実施した。
2)平成25(2013)年9月15~16日( 大型台風型)の対応
全国的にも甚大な被害を与えた台風18号の影響によって、広域的な降雨で徐々に水位が上昇し、約7時間も越流が続く長時間越流となった。そのため、越流時間中に利用者が公園内に入らないよう、園内巡回や放送等による安全管理を徹底する必要があった。緩やかな上昇による越流のため、汚泥や漂流物の堆積は少なく、構造物の破損もなかったため、越流後の復旧作業は比較的速やかに実施することができた。

(3)復旧作業について

排水は、安全の確保ができる日中に行い、排水が終わると早期に利用再開するため、A ~ C ゾーンの利用状況の把握に基づき優先エリアの策定、復旧作業工程の告知や掲示を行った。復旧作業は、利用者への影響を最小限に抑えるため、比較的被害の少ないC ゾーンから作業を始め、完了次第順次利用再開した。

復旧作業は、10~20名のスタッフが各工程でチームになり、効率的に園内をまわり作業を行った。

経過日数による作業工程( 各工程をゾーンごとに同時並行で進める)
越流後2 ~ 3 日:障害物の撤去作業
・破損した構造部の解体撤収
・流木、落ち葉やごみ・死魚の回収処分
越流後3~4日:施設の点検・洗浄作業
・園路、遊具、ベンチ等に堆積した汚泥を高圧洗浄やロードスイーパーで除去後、タンク車両を用いた水洗い、雑巾やタワシによるふき取り、消毒作業
・汚泥が残った箇所は、スタッフが手作業で直接清掃、消毒園路洗浄
越流後4~5日:利用再開に向けた安全対策
・遊具等の安全点検
・巡回担当者と重点箇所や最終確認のポイント等の共有
・復旧作業を継続する地区への立ち入り禁止措置等の安全確保
利用再開後:その他(花壇の復旧等)
・水没、泥によって枯れた全ての花苗の撤去
・天地返しや水はけ改善等、土壌改良
・樹木等、泥が付着した葉の除去

復旧に向けた作業として、特に安全対策が重要であるため、復旧前に被害がどの程度か調査し、最後に遊具やベンチなどは目視・触診や打診によって傷んでいるところがないか、柵は損傷の有無などの確認を行った。また、復旧作業中の地区の入口のバリケードに立て看板を設置し、作業状況を告知することで利用者が入ってくることのないよう情報の公開を行い、こまめな巡回とともに利用者への安全確保を徹底した。

3. 管理マニュアルによる成果

深北緑地パートナーズは、指定管理期間の2度の越流経験を活かし、より効率的に速やかな対応ができるよう、マニュアルを作成している。平成24(2012)年の越流後、復旧に関わった全スタッフの反省点を集約して、具体的な改善点を検討し、状況に応じた復旧作業のノウハウをまとめたものである。内容としては、バリケードや表示物の設置場所のマップ化、表示内容や表示方法、復旧に必要な備品や清掃用具の種類や数、各工程でのスタッフの配置などである。このように、マニュアル化することで平成25(2013)年の越流時には、復旧作業期間を7日間も短縮することができ、早期開園を提供できた。

4. 今後の課題

近年の2度の大規模越流の影響と思われる園内の植生変化が課題となっている。具体的には、ヨシ、オギ、セイバンモロコシなどの大型イネ科植物が急激に拡大し、繁茂の状況によって当初の除草計画を変更している。今後も冠水により植生が変わることも考えられるため、公園の植栽がどうあるべきか、詳細な調査を行い、公園の設計状況や、利用のあり方の分析等を踏まえて、管理計画の改善や優先性の高い対応を検討していく必要がある。また、樹勢の衰えも見られるため、土壌調査などを行い、原因の究明を図っている。 さらに、復旧作業にかかる費用は、指定管理料の中に含まれているが、作業費は想定の費用よりも増えることもあり、いつ越流が起こるのか想定しづらいため、復旧に係る予算を確保しておかなければならないことも課題である。

今後の展開

毎年9月に地域団体や、市民ボランティアとの協働による、野外映画上映会「ザ・夕涼み」を開催していたが、平成24(2012)年、平成25(2013)年は越流と重なり開催が危ぶまれた。しかし、復旧作業中でも、利用者に公園を楽しんでほしいという公園スタッフの思いと、イベントに対する市民の熱意により開催することができた。排水完了後すぐという厳しい状況下においても、開催できたことで、地域の方々の強い力と想い、地域と公園との繋がりの深さを改めて認識することができた。
越流後の復旧作業において、最後のゴミ拾いなど一部を公園ボランティアや利用者とともに取り組んできた。また、越流に備えた側溝の清掃作業、花壇の植え替え等も協働で行っている。今後は、治水機能を保つことと、災害時により速やかな対応ができる体制を整えるため、公園のボランティア団体や活動している団体などを募って、協働による公園づくりをさらに進め、より地域と一体となって街を水害から守る「公園をみんなで支える」体制づくりに取り組んでいく。

取材協力(平成28年):深北緑地パートナーズ 西武造園(株)

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