公園とカフェのコラボレーションによる活性化

富山県富岩運河環水公園

カテゴリー:パークマネジメント 民間活力

富山県富岩運河環水公園 写真

施設概要

所在地 富山県富山市湊入舟町
開設 平成23年3月
面積 97,000m²
公園種別 総合公園
設置・管理者 設置者:富山県 指定管理者:(公財)富山県民福祉公園

富山駅北地区で展開する「とやま都市MIRAI 計画」のシンボルゾーンとして、旧運河と一体的な公園整備により創出された親水文化公園である。園内のスターバックスコーヒーは、運河を一望できる景観を活かした美しい店舗として有名。

詳細

はじめに

富岩運河環水公園は、富山駅北地区に位置し、県都のシンボル的オアシスとなるよう富岩運河の再生を図り、自然と人が調和した親水環境を創出された親水文化公園である。公園の魅力の一つであるカフェは、スターバックスコーヒーが都市公園内へ出店した全国初の店舗であり、平成20(2008)年ストアデザイン賞※を受賞している。また、園内では都市魅力創造、賑わい空間として様々なイベントが行われている。
運河の景観と駅周辺という立地を活かし、魅力的な施設の導入、イベントの取り組みによって、都市のシンボルとなった公園の取り組みを紹介する。
※全世界でオープンしたスターバックスの店舗のなかで最もすぐれたデザインの
店舗に贈られる社内の賞。その2008 年度の最優秀賞を見事受賞。

1. 運河の歴史を活かした親水文化公園の整備
(1)整備の経緯

昭和10(1935)年に完成した富岩運河は、富山の工業化に大きく寄与したが、物流の中心がトラックに移ってからは水も汚れ、一時は埋め立て計画もあった場である。
この富岩運河の舟だまりも含めたJR 富山駅北地区で、新たな都市拠点の形成を図る「とやま都市MIRAI 計画」を昭和60(1985)年代に策定し、県都富山市の玄関口である同地区において、鉄道跡地や運河舟だまりなどの遊休地を有効活用し、さらに民間活力の積極的な導入を図りながら、21世紀における富山県・富山市の産業・文化を先導するとともににぎわいと品格のある都市拠点を形成することとした。
富岩運河環水公園は同地区のオアシス、シンボル緑地として整備されたものである。

「とやま都市MIRAI 計画」のコンセプト
 M − Multi − functions(複合機能製)
  I − Information(情報性)
 R − Rising(成長性)
 A − Amenity(快適性)
  I − International(国際性)

(2)公園の施設

港湾緑地や親水広場( 都市計画道路)と一体となって緑のオープンスペースを形成している。富山駅から約3㎞、国の重要文化財に指定された中島閘門まで一体的に散策を楽しむことができる。
泉と滝の広場
川の最上流部をイメージする滝と湧水をイメージする水盤とからなる。通年ライトアップを実施。
天門橋
泉と滝の広場と並ぶ公園のシンボル施設で、両端の展望塔からは公園全体が一望でき、立山連峰も望めるほか、展望塔の間に長さ58m の「赤い糸電話」があり、愛の告白スポットとなっている。また、夜間はライトアップされ、公園を印象づけている。
野外劇場
観客席数660席の多様なイベントに使用される水辺と芝生に囲まれたステージ。
あいの島(バードサンクチュアリ)
入り江や島を配置し、植栽にも留意したまちなかの野鳥の楽園で、観察舎からのバードウォッチングも定期的に実施している。
また、公園区域外ではあるものの、メインアクセスを兼ねる「親水広場」も、公園と一体の施設として認識され、イベントなどでも活用されている。

 

2. 管理・運営
(1)指定管理者制度の導入

平成22(2010)年度末に公園の整備が完了し、全面開園となったことから、平成23年(2011)年7月に直営管理から指定管理者による管理に移行している。
指定管理者制度の導入を機に、従来は警備員による巡回を主とした管理体制を変更し、新たに窓口対応を行う常駐職員を配置した。当初は職員1名が常駐していたが、公園利用者の増加に対応するため、平成27(2015)年度からは2名に増員し、公園利用者の更なる利便性向上を図っている。
さらに、県外からの観光客に向けて、富岩運河環水公園の概要や成り立ちや、関連する周辺土木事業の歴史等を発信する公園解説ボランティア「富岩運河かたりべの会」や、園内の花壇を世話するボランティアなど、住民と協働した運営や活動も行われている。

(2)運河と一体的な管理運営

平成21(2009)年7月から、県と富山市により、環水公園から富岩運河下流部を結ぶ全長約7kmの運河クルーズ「富岩水上ライン」を、春から秋にかけて運航している。
県の電気船「fugan」と「sora」( 各定員55名)、市の電気ボート「もみじ」( 定員11名)の3隻で定期運航を行うほか、貸切運航も行っている。
平成27(2015)年度の運河クルーズ利用者は5万人に達し、県外利用者の割合が約7割となるなど、県内外から多くの利用者が訪れる公園の新たな魅力の一つとなっている。
また、春の「キッズフェスタ」、夏の「夏まつり」、秋の「運河まつり」、冬の「スイートクリスマス」などの四季の大型イベントのほか、毎月の第3日曜日を「環水公園の日」としてイベントを実施しており、この中でカヌー教室やウォーキング教室なども開催されている。

(3)利用状況

平成25(2013)年度は、年間約129万人が利用。平成26(2014)年度にはそれを上回る140万人の利用があり、平成19(2007)年度の利用者70万人から倍増している。
駅に近く、市街地の中心部に位置することから、四季折々に様々なイベントが行われ、県外からの観光客も多く訪れている。また、日常はウォーキングや犬の散歩など、県民の憩いの空間としても親しまれている。

富岸運河環水公園 年間利用者数

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3. カフェ出店への取り組み
(1)背景と経緯

都心のオアシスとしての閑静な水辺空間づくりが目指された公園であるとともに、富山駅北地区のにぎわいづくりにも寄与する公園としての役割もあったため、平成18(2006)年度に、「環水公園等賑わいづくり会議」を設置し、検討を進めた。
この中で5つの提言の1つとして「魅力ある施設の導入」として休憩のできる場としての飲食施設が必要とされたのも、出店公募の契機となった。
ただ、この時点では、他の県営公園での管理許可による出店がうまくいかなかった例もあったため、移動販売車を導入しての試行なども考えていたが、飲食店側からの出店の打診がいくつかあったことから、公募に踏み切った。

(2)公募条件等

「富山県富岩運河環水公園飲食店出店者募集要項」を作成し、平成20(2008)年2月から、公募型プロポーザル方式で募集した。
出店に係る条件として提示した、主要な事項は次のとおりである。

○設置運営形態として
・都市公園法第5条に基づく、「設置許可」を受けての運営とする。
・設置許可の予定期間は10年間とする。
○経費負担等
・設置許可使用料は20円/㎡/ 日とする。
・設置許可終了時( 更新しない場合)は原状復旧費用を負担する。
○営業条件、その他
・通年営業とし、定休日を設ける場合は土日祝日以外とする。
・店舗や看板等のデザイン、色彩等は公園内の他施設と一体性を保つものとする。
・年1回の営業報告を行うこと。 等

 

またこれに基づき、提出する企画提案書の項目として次のような事項を定めた。

①飲食店の出店コンセプト
②店舗デザイン、添付レイアウト(イメージ図等の添付)
③スケジュール案( 着工、完成、開店時期)
④店舗概算工事費及び資金目途
⑤営業時間( 平日・休日別)
⑥定休日
⑦メニューの種類と価格
⑧駐車場の管理
⑨その他の提案( 要望等も含め)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(3) 選定結果

募集期間中に、募集要項を受領したのが6社で、現地説明会に参加したのが4社、応募したのが2社であった。
審査は、庁内に「富岩運河環水公園飲食店出店者選定委員会」を設けて行い、その結果、「店舗のデザインが富岩運河環水公園にふさわしい上質なものであり、公園利用者にも利用しやすいものであること」と「富岩運河環水公園の賑わいづくりと利用促進につながる各種サービスの提案と意欲があったこと」が評価され、スターバックスコーヒージャパン株式会社( 以下、「スターバックス」と略す)が選定された。
設置許可の期間は平成20(2008)年6月20日から平成30(2018)年3月31日までで、設置許可面積は314㎡、使用料は年間約230万円である。

4. 導入の効果等
(1)導入効果

公園利用者は、統計をとり始めた平成19(2007)年度には70万人であったが、公園供用区域の順次拡大や官民一体となったイベントの開催に加え、平成20(2008)年度のスターバックス開店のほか、平成21(2009)年度の運河クルーズ就航等による利用増もあって、平成26(2014)年度には140万人に達している。
また、スターバックスの営業時間が8:00~22:30までとなったことで、ライトアップされている公園の夜間利用に対する安心感の創出に貢献している。そしてテラス席については犬の同伴もOK なので犬の散歩に訪れる公園利用者にも好評である。
近年は、世界で一番美しいスターバックスとして評判となっており、県内外から多くの利用者が訪れる場所となっている。
総じて、スターバックスの営業は、公園の認知度向上や利用増、利用形態や利用層の拡大に一定の効果があったと考えられる。

(2)その他の取り組み等

 北陸新幹線開業( 平成27(2015)年3月)の効果を持続させ、当公園が県内はもとより国内外から「ぜひ訪れたい」と思ってもらえる、富山県の新たな名所としてますます賑わうよう、「TOYAMA Free Wi-Fi」の整備( 平成28(2016)年度利用開始予定)のほか、新近代美術館の移転新築工事( 平成29(2017)年開館予定)に取り組んでいる。
美術館の屋上は遊具を併設した庭園として整備されるとともに、館内には洋食レストランやカフェの出店も予定されており、公園の更なる魅力向上に貢献することが期待されている。

取材協力(平成28年):富山県都市計画課区画整理・公園係

 

 

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