子どもリピーターを増やす取り組み

小田原フラワーガーデン

カテゴリー:リピーター対策 植物管理

小田原フラワーガーデン 写真

施設概要

所在地 神奈川県小田原市久野3798-5
開設 平成7(1995)年4月29日
面積 4.2ha
公園種別 特殊公園(植物公園)
設置・管理者 設置者:小田原市 指定管理者:小田原フラワーガーデンパートナーズ 西武造園株式会社(代表企業) 伊豆箱根鉄道株式会社(構成員企業) 株式会社加藤造園(構成員企業)

『花と緑の生活文化の創造』をメインテーマに「豊かなライフスタイルを築く" 楽しい花園" づくり」を目指して平成7年にオープンした。平成23 年度より指定管理者制度を導入している。

詳細

1. 概要
(1)フラワーガーデンの沿革

都市公園として憩いの場を利用者に提供するとともに、温室施設を有する学術公園施設として、利用者に植物学の学習の場を提供する場として設置された。また、緑の基本計画において、市を代表する都市のみどりの拠点として位置付けるとともに、市の緑化推進の拠点としての機能拡充を図ることとしている。平成7(1995)年4月29日に開園した。
なお、小田原市地域防災計画では風水害等避難所( 土砂災害時一時避難施設)及び応急仮設住宅候補地に位置付けられている。
平成22(2010)年度までは市の直営で管理を行っていたが、平成23(2011)年4月からは指定管理者制度を導入し、一期目が平成23(2011)年4月~28(2016)年3月まで、現在は二期目となっており、平成28(2016)年度から平成32(2021)年度までの5年間について「小田原フラワーガーデンパートナーズ」が一期目に引き続き、指定管理業務を行っている。

公園平面図
(出典:小田原フラワーガーデンHP)

(2)フラワーガーデンの施設概要

公園種別としては、特殊公園( 植物公園)で、面積は4.2ha。
①トロピカルドーム温室

直径40m、高さが22mあり、隣接する環境事業センター( ごみ焼却施設)から、温水循環方式により熱源の供給を受け、温室を加温している。約300種の熱帯・亜熱帯花木、果樹を展示している。
②渓流の梅林
約200品種480本以上のウメを展示している。早咲き、遅咲きなど種類が豊富で、開花時期は長い。
③バラ園
145品種345本のバラが植栽されている。
④ハナショウブ池
渓流の梅林内の「流れ」から「ハナショウブ池」に沿って約180品種1,000株が植栽されている。また、同時期に約500株のアジサイも見頃を迎える。
⑤アルカディア広場、踊る噴水
アルカディア広場では、ボランティアと育てた季節の一年草花壇が広がっている。また、夏期限定で噴水を稼働させており、水遊びのできる人気のスポットとなっている。

利用者数と収入

利用者数

2. 利用状況

過去10年間の利用者数については下記のようになっている。
指定管理者制度導入前の6年間の平均が21,425人なのに対し、平成23(2011)年度以降の平均値は35,308人となっており、指定管理者制度導入以降、人数は着実に伸びている。

3. 周辺施設

小田原フラワーガーデンの周辺、神奈川県西部から静岡県東部にかけては、ウメやバラ、サクラなどの花の名所となっている施設が多く点在する。

周辺施設の状況

4. 利用者増への取り組み
(1)植栽の工夫

周辺の花の名所との差別化を図り、見せる部分をきっちりと分けるようにしている。
バラの開花時期には「アリウム・グローブマスター( ネギ科)」という花も見頃を迎え、バラと巨大なネギ坊主の共演が見られる。バラ講座( 一年を通して、実際にフラワーガーデンのバラを見ながら管理方法を学べる少人数制の人気講座)の終了時に講座参加者と記念植樹を行い、毎年種類を増やしていっている。

ウメについては、約200種という種数の多さを活かし、毎年視点を変えた展示を行っており、平成28(2016)年度は「遅咲きの梅」を特集した。単一品種での植栽だと見頃の期間も短くなるが、フラワーガーデンでは1月から3月初旬まで様々な品種を楽しめる。

(2)リピーター獲得の工夫

今までの植物園というと比較的年齢層の高い方の来園が多かったため、フラワーガーデンでは子ども達が来るコンテンツを検討した。
「世界中を旅している謎の植物学者 アロア・ワッドが探検隊員を募集している」という設定で、来園した子ども達にミッションカードを配り、トロピカルドーム温室を回って貰い、ミッションをクリアした人には隊員証にスタンプを押すようになっている。隊員はミッションを5個クリアすると次のレベルの隊員証が貰えるようになっており、15個のミッションをクリアすると、正隊員になることができる。

更に、正隊員になると、今度はミッションカードではなく、植物紹介レポートの提出が求められる様になる。レポート5枚につきスタンプ1個となり、園内に掲示されている。
正隊員も5ポイントごとに新しい隊員証が貰え、既に十数枚の隊員証を更新している熱心なリピーターもいる。ゲーム感覚で楽しみながら、植物を観察し、発見し、学びに繋げていくような仕組みになっている。
夏休みには正隊員レポート展を行い、まだ正隊員になっていない来園者が頑張ってランクアップしたくなるような仕掛けとして、正隊員のみが参加出来る特別イベントを開催している。
トロピカルドーム温室入園料は大人200円、小中学生は100円と高くはないが、年間パス制度は無い施設なので、そういったリピーターの獲得は、貴重な収入源となる。65歳以上の方は減免( 証明要)となるため、今までの利用者層では入園料収入がなかなか伸びなかったが、小学生の子どもと親御さんでの来園が増えたため、平成23(2011)年にアロア・ワッドの企画を始めてから、入園者も収入も伸びている。

(3)イベント等の実施

「また行きたい」と思わせるための様々なイベントを企画・運営しているが、その中での工夫が、『いつ行っても何かやっている』という取り組みで、土日には必ずイベントを行っており、開始時間を11:00と13:30に固定している。そのため、親御さんが週末にどこへレジャーに出掛けるか迷った時でも、『何かやっているからフラワーガーデンに行こう』という意識の定着を促した。イベント自体はテーマを持った無料イベントで、植物をテーマにしたものを中心に行っている。
また、毎週日曜日には朝市を行っており、来園者が多くなるが、土曜日の集客のため、春のローズフェスタや梅まつりの繁忙期の土曜日は、地元の商店街と連携したプチ軽トラ市を始めた。出店を行う際の条件として、「小田原のもの」を扱う事を原則としている。

(4)広報

ホームページやブログ、Facebook での広報を行っているが、インターネットを使えない方に対しては、市の広報紙への掲載や、市の施設へのポスター掲示を行っているほか、小田原市の記者クラブへの投げ込み等を行っている。また、指定管理者の構成企業に伊豆箱根鉄道(株)も入っているため、沿線の駅においてポスターやチラシの掲示を行っている。
配布用のチラシは、表面は現時点のお知らせしたい情報を、裏面にはこの次に行われるイベント予告や開花情報を掲載し、次に繋がるように工夫している。電話での問い合わせが多いのは、アクセス関連、入園料、花の情報などだが、一度も来たことが無い方からは、全域が有料の施設だと思われている事も多いので、ここ最近は、パンフレットやチラシ等に「入園( 梅林・バラ園・ハナショウブ池も含む)・駐車場、共に無料です。※トロピカルドーム温室のみ有料」と記載する様にしている。
また、トロピカルドーム温室の「ヒスイカズラ」を宣伝するため、伊豆箱根鉄道大雄山線に『ヒスイカズラトレイン』を1編成走らせている( 運行期間:平成29(2017)年3月9日~4月27日)。
市のみどりの拠点であることを宣伝するため、地域の商店街やマルシェ等へ出張し、ボランティアと一緒に種から育てた花苗の配布や、植物クラフトの体験教室なども行っている。

5. 今後の取り組み

子ども達の興味や向上心を継続させるための更なる取り組みを展開していく。
また、リピーターの獲得によって、ローズフェスタ開催期間中の土日、ウメ開花時期の土日などは、駐車場が満車になり、渋滞が発生してしまう。警備員を配置し、同じく指定管理を行っている隣の県立公園への誘導や、伊豆箱根バスの臨時バスの増便等で対応しているが、更なる繁忙期の分散対策が必要となる。
施設の供用開始から22年が経過し、建物や設備の老朽化等も進んでいる。市と相談しながら、長寿命化への対応、コスト削減を検討していく必要がある。

 

取材協力:小田原フラワーガーデン

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