参加型の管理運営による地域のにぎわい拠点づくり

小諸市大手門公園

カテゴリー:地域活性化・コミュニティ 市民参画 歴史・地域文化

小諸市大手門公園 写真

施設概要

所在地 長野県小諸市大手一丁目304-2
開設 平成21(2009)年
面積 12,000㎡
公園種別 都市緑地
設置・管理者 設置者:小諸市 指定管理者:NPO法人こもろの杜

平成3 年4 月に歴史的遺産である「大手門」が小諸市に寄贈されたことを契機に、都市環境の改善及び都市景観の向上を図る目的で整備された。平成16 ~ 19 年度には江戸時代の姿に復元することを目的に「大手門」の保存修復工事を実施。計画面積1.6ha に対し供用面積は1.2ha で、未供用部分は現在民間駐車場として利用されている部分である。小諸駅前に位置する。
[主な施設]
停車場ガーデン、ガーデンカフェ、せせらぎの丘、小諸宿本陣主屋、小諸城大手門(国重要文化財)、三の丸(城郭) 

詳細

1. 公園の概要
(1)整備の概要

小諸市は人口約4.4万人を有し浅間山の自然や小諸城などの歴史に代表される観光都市であり、ピーク時には100万人以上の観光客が訪れていた。しかし、長野新幹線の別ルートでの開業などで観光客の減少がみられ、同時に中心市街地の賑わいが失われたため、活性化に向けた検討が進められた。この中で、美しい緑豊かな空間として再生しようとする「駅・大手門周辺まちづくり整備事業」にかつては小諸城の城内であった駅周辺地域が取り組まれた。
平成17(2005)年度から市民参画による整備構想案づくりに着手し、この中核施設として整備されたのが「大手門公園」であり、この第1期開園区域に対して公募で選定された愛称が「停車場ガーデン」である。市民参加による公園デザインや整備、管理への取り組み実績が評価され、「緑のデザイン賞」や「緑の都市賞」を受賞している。

(2)指定管理の概要

平成21(2009)年4月1日の開園当初から指定管理者制度が導入されており、現在は第3期目である。指定管理者は「NPO法人こもろの杜( 以下「こもろの杜」と略す)」で、まちづくり事業に参加していた市民有志を核として組織され会員数は50名ほどである。主たる事業は大手門公園の管理であり、指定管理料約1千万円を基に運営している。

2. 公園の管理
(1)管理体制

これまでは「園芸部門」、「カフェ部門」、「本陣主屋」の3つに分かれた管理体制を敷いていたが、現在カフェ部門は外部に委託している。園芸部門は公園内の植物管理全般を担当し、5名のスタッフで対応している。本陣主屋は当番制で1~2名のスタッフを配置している。このほか、全体の経理や、ガーデンだよりの発行などの企画広報はこもろの杜本部の方で担当している。

(2)管理業務

○植物管理
公園内の大半が緑化され、修景性の高い植栽や、宿根草や葉ものをメインにした草花植栽が中心である。信州地域の気候に適した山野草や多肉植物などの植栽も行われている。梅雨明け以降はほとんど雨が降らない地域であるため、夏季は毎日潅水が必要で、冬季は多肉植物を温室に取り込むなどしている。
○施設管理
従前から敷地内に井戸があったため地下水を利用した掛け流し方式の水路が芝生園地にあり、この水路の清掃や藻の除去などにも手間がかかっている。公園内のトイレの清掃は市の直営で指定管理業務の対象外であるが、休日のみ管理を委託されている。
○カフェ、食品・雑貨販売
委託先のシェフが公園側からの提案を受けて、公園内の草花や野菜、ハーブを利用したメニューを開発・提供し、好評を博している。食品や雑貨販売はこもろの杜が手がけており、ここでは市民グループや地元商店などからの委託販売も行っている。この収益の一定割合が指定管理者の収入となり、公園の管理運営に充てている。
○園芸ショップ
仕入れ品は扱わず、全て委託商品であり、多肉植物、エアープランツ、苔玉など、通常の園芸店に少ない商品が多い。この売り上げが約430万円あり、2割が手数料収入となる。
○緑の相談所
週3回、内部の園芸の専門家が対応しており、来所や電話相談のほか、市内であれば訪問しての相談受付も行っている。延べ受付件数は1,400件余りである。
○展示
本陣主屋は展示施設として利用されており、小諸の歴史関係の展示のほか、地元作家のギャラリーとしての利用や、企画展なども行っている。
○「花と緑の学校」
園芸入門講座として、毎月2回を基本に開催している。講義と実技を織り交ぜて実施し
ており、資料代や材料費などの実費程度を徴収し、平成26(2014)年度は22回開催し、延べ251名が受講している。
○イベント
「ガーデンマルシェ(地場産品等の販売)」や「魔女の市場( フリーマーケット)」などの物販イベントも始め、人気がある。「まじめな婚活パーティーin ガーデン」というユニークなイベントも年4回実施している。平成27(2015)年度には、公園利用者からの希望で「ガーデンウェディング( 披露宴)」を実施した。地元新聞等でも報道され、宣伝効果としては有益であった。
○広報宣伝
ホームページはこもろの杜で直接運営しており、その中の「停車場ガーデン日記」というブログを設けて更新に努めている。広報紙「停車場ガーデンだより」を毎月発行しており、これは小諸市内の住民にも回覧されている。

(3)利用実績

公園が小諸駅と「懐古園( 小諸城址)」とを結ぶルート上に位置しているため、観光客の立ち寄りも多い。園内の各所に置かれたベンチでくつろぐ人や草花の写真を撮る人なども常時見受けられ、公園が暮らしに溶け込んでいる様子がうかがえる。

3. 参加型の取り組み
(1)全体の運営体制

公園の計画段階から多様な市民参加が行われ、その時の中心メンバーがこもろの杜を設立し、指定管理者となっている。下記の3つを柱に取り組んでいる。
・「小諸のまちを元気に!」
・「花と緑でまちおこし」
・「小諸の食を育てる」
この実現のためには市民との協働は不可欠となっている。このため、指定管理者となっているこもろの杜の実働部隊と連携する管理体制が構築されている。

(2)公園ボランティア等

「こもろ花クラブ」では、公園の開園に合わせて発足し20名ほどが登録し、活動している。毎週金曜日が定例の活動日で、庭の手入れや水やり、除草などを行うが、このほかに庭の案内ガイドや花と緑の学校のサポート、催物の企画なども行っている。
「こもろ山野草クラブ」は、公園内に山野草園がオープンしたのを契機に、野草の専門家をリーダーとして結成され山野草園の手入れを行っている。
創作人は、休館中であった本陣主屋の利用案づくりの中で、人形作家を中心に結成されたグループである。本陣主屋での展示の企画や運営に協力している。

(3)その他の連携

小諸市の「まちなみ研究会」や「にぎわい協議会」にこもろの杜が参加しており、城下町フェスタなどの全市的なイベントでの公園利用につながっている。鉄道会社と公園の横を通る鉄道のフェンス沿いの草刈りなどを一緒に行っている。近年は、しなの鉄道が運行している観光列車「ろくもん」の下り列車の客を小諸で途中下車させ、公園に案内している。
ガーデナーや造園家、山野草の専門家、料理研究家などと連携して、ボランティアの講師等の依頼や相談などを行っている。小諸市周辺で、農産加工品や園芸品をつくっている事業者、または園芸品や手作り品を制作している個人などを、販売ブースでの出品者として連携している。
せせらぎの丘を整備する際に地元の小学生が水生植物の植え付けなどを行い、その後中学生が清掃にも参加している。
庭づくりへの協力のため「停車場ガーデン花基金」を設け、随時募っている。山野草園を整備した際は、「樹木スポンサーの募集」や「岩石プロジェクト」を立ち上げて寄付を募ったほか、不要になった庭石などの提供をお願いした。

今後の取り組み
(1)評価すべき点

公園として目指していた3つの柱は一定程度達成され、多様な参画を経て実現されていることにも意義がある。草花植栽を中心とした修景性の高い公園の美観が維持されている。公園に寄せられる要望も、指定管理者では対応し難い駐車場の不足程度である。
小諸駅前のメインストリートでは、「停車場ガーデンのようなおしゃれなガーデニングをしたい」という声が上がり、こもろの杜の園芸チームがサポートして、植栽枡やプランターを活用した緑化を図っている。
ソフト面でも、イベントや講座の開催を通じたアーティストや専門家のネットワークが形成され、まちづくりの輪が広がりつつある。平成26(2014)年からは、市役所の建て替えに合わせて整備される「あいおい公園(1,900㎡の広場)」のワークショップに、こもろの杜が植栽計画や人材育成でのアドバイスや全体コーディネイトを行うという立場で
参加している。

(2)課題と今後の展開

オープンな公園であり、観光客の立ち寄りや通過も多いため、公園全体の利用者数が把握出来ていない。また利用マナーに起因する問題がみられるため出来るだけ禁止看板などは掲げずに、きれいな公園を維持することでマナーアップにつなげるようにしている。
維持管理費は指定管理料だけでは厳しいため、収益を伴う自主事業の必要性を感じているが、なかなか適当な事業が見いだせない状況である。
今後はこれらの課題を解決するための方策を検討していく。

取材協力(平成27年):NPO法人こもろの杜

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