大阪発公園からの健康づくり

山田公園ほか14公園

カテゴリー:健康づくり

山田公園ほか14公園 写真

施設概要

所在地 淀川河川公園、服部緑地、山田池公園、寝屋川公園、枚岡公園、大泉緑地、浜寺公園、石川河川公園、蜻蛉池公園、りんくう公園、せんなん里海公園、鶴見緑地、八幡屋公園、南港中央公園(野球場)、長居公園
開設
面積
公園種別
設置・管理者 国土交通省、大阪府、大阪市

大阪府下の国営公園(淀川河川公園)、府営公園(服部緑地ほか9 公園)、大阪市営公園(長居公園ほか3 公園)をネットワークして健康づくりに取り組んでいる。これらの公園周辺1kmの範囲には約140 万人の府民が生活している。

詳細

1.「大阪発、公園からの健康づくり」の取り組み
(1)活動の背景

超高齢社会を迎え、健康づくりや健康寿命延伸は個人の生活の質を高めるだけでなく、社会保障制度を維持し安心して暮らせる社会をつくるためにも重要性が増している。従来、公園は身近な運動の場として利用されてきたが、多くは「すでに運動に親しんでいる人に場を提供している」状態で、体を動かす習慣が無い人、本当に健康づくりが必要な人を公園に招き入れることは十分にできていなかった。
健康づくりに関心を持つ人に、「公園で健康づくりが効果的に行えること」を周知する必要がある。そして、より多くの人が容易に健康づくりに取り組める環境を整えるために、複数の公園で質のそろった健康促進プログラムを随時提供することが必要である。

(2)都市公園の連携

市民がいつどこでも健康づくりに取り組める環境を整えることを目的とし、大阪府下の公園を管理する団体が連携して、「大阪発、公園からの健康づくり」推進グループを形成した。公園はすでにパークシステムに基づいて整備されており、既存の公園をネットワークさせることによって多くの公園で同質のサービスを提供することが連携のねらいであ。さらに、これにより公園が地域包括ケアシステムの「予防」を担う場としても、広く認識されていくものと期待している。

(3)連携する公園の概要

連携する15公園のうち、淀川河川公園は、大阪湾河口部から京都府の三川合流部まで延長37km におよぶ国営公園である。長大な公園の形状を活かしてマラソン大会などが多く開催され市民スポーツが盛んである。府営公園は、健康と生きがいを支える公園( 服部緑地など)、山に親しむ公園( 山田池公園など)、海に親しむ公園( りんくう公園など)、市街地に広大な都市林をつくる公園( 大泉緑地など)の4つのタイプがあり、域各所に配置され府民に利用されている。
市営公園は、長居公園( 東住吉区)、八幡屋公園( 港区)など大阪市内にあって交通の便がよく国際大会が開かれるスタジアムや体育館などの施設が充実している。これら特徴ある公園が連携して「大阪発、公園からの健康づくり」に取り組んでいる。

(4)ロゴマークの作成

この取り組みを市民に知っていただき、「公園」と「健康」が意識されるように当初よりロゴマークを作成して活動の展開を図っている。

2.構成団体

現在、推進グループの構成団体は、( 一財)大阪府公園協会、( 一財)大阪スポーツみどり財団、淀川河川公園管理グループ共同体( 阪神造園建設業協同組合、( 一財)公園財団)、( 株)公園マネジメント研究所、(株)東京ランドスケープ研究所である。
事務局は( 株)公園マネジメント研究所が担当している。推進グループの様々な取り組みは、月1回のペースで集まり意見交換するなかで具体化が図られている。主な連携内容は以下の通りである。

○健康づくりに関する知見を収集し、推進グループで共有する。
○健康づくりに関する方法を共有し、普及にあたる人材を共同で育成する。
○各公園で日常的に行う健康促進プログラムを共有する。(スロージョギング教室等)
○ 「大阪発、公園からの健康づくり」の取り組みPR を連携して行う。
・「大阪発、公園からの健康づくり」についての共有する広報資料の作成
・事業
・催事の広報計画
・協力して行う大規模なイベント情報と日常的に行う各公園の教室情報との連携
・「大阪発、公園からの健康づくり」ホームページの作成
・運用
・各団体の協力内容の協議(HP リンク、共通ポスター、チラシの配布協力、各団体が発行する広報誌へのイベント情報掲載)
・取り組み事業についての発表、関連シンポジウムへの参加、記事投稿、各種表彰制度への応募
○取り組みに賛同してくれる企業・団体についての情報の共有
・イベントや健康促進プログラムの提供に際して、一般企業や団体が開催・運営に協力
・成長が見込まれるヘルスケア市場に関心がある企業の参画、「健康」に関心の高い企業・団体のCSR 等の目的での協賛
・企業情報の共有と、各公園での取り組み情報の企業への提供
 3.イベント・教室の開催
(1)大規模イベント

健康促進プログラムの周知と契機の提供を目的として「公園でからだにいいことDAY」等のイベントを開催している。イベントは開催場所となる公園の管理運営団体が主催となり、推進グループの各団体は広報協力などを行う。平成27(2015)年秋の長居公園でのイベントには、2,000人を超える参加者があった。

(2)健康促進プログラム(教室等)

各公園では、日常的な取り組みとして健康促進プログラムの提供を行っており、大規模イベントでのPR 効果により教室への参加も個別広報をあまり要することなく活発化している。
スロージョギング等の教室の開催頻度と参加者は増加しており、平成27(2015)年度は10公園で約70教室開催、参加者はおよそ2,000人にのぼった。平成28(2016)年度は、200教室の開催を目指している。

(3)スロージョギングについて

スロージョギングは、健康増進を図るために、運動生理学の専門家が考案した適切な運動強度で身体を動かす運動メソッドで、歩行と同等のペースでゆっくり走る運動方法である。歩行に比べて全身を使うため、消費エネルギーがウォーキングの約2倍になる。
ケガ防止などの安全にも配慮されており、運動が苦手な人でも取り組みやすい。習慣化することで体力アップはもとより、生活習慣病の予防、肥満の改善、脳の活性化、ストレス解消等に効果的である。

スロージョギング教室参加者の声(山田池公園)
山田池公園の教室当日、参加者は楽しそうに笑顔で取り組んでおり、満足度が高いことが感じられる。また、参加者からの要望により毎週火曜日に「ゆっくり走ろう会」が行われ、健康促進プログラムの定着が見られる。
「今まで特別な運動はしていなかったが、この公園でスロージョギング教室の開催を知り、毎月参加している。楽しく運動できているのでこれからも続けたい。」(60代女性)
「退職してからいつもこの公園に来ている。スロージョギングも毎回参加して、時には地元の仲間と一緒に運動している。家にいるより気分もリフレッシュ
するのでこれからも続けたい。」(60代男性)
4.施設整備

健康促進プログラムの実施にあたり、スロージョギングに関する路面標示「SJ メイト」が整備されている。SJ メイトは、効果的な運動強度を確認・把握し、運動の継続を促すために開発された距離表示で、現在大阪府下6公園に設置されている。
スマートフォンを使ったネット接続技術( アプリ)との連動により、自身の運動記録や健康に関する情報へのアクセスも可能となるよう実証試験中である。

5.人材育成

公園スタッフが公園利用者にとってより身近な存在となるため、自らも健康管理に関する知識やスキルを身に付けることが重要である。このため基礎的な健康づくりの理論が学べるスロージョギング指導者養成研修を利用し、健康づくりを指導できるスタッフの育成に取り組んでいる。
2年間で育成できた指導者はベーシック資格、アドバンス資格を合わせて64名にのぼり、年間1万人が参加できる教室の運営体制が整った。

6.成果

この取り組みにより管理者と利用者が定期的に顔を合わせる機会が増え、市民とのコミュニケーションが活発になり、公園管理に関する市民の理解も深まっている。
平成28(2016)年2月には、健康づくりのための活動、または健康づくりを推進する社会環境整備の取り組みとして、大阪府から第1回「大阪府健康づくりアワード」地域部門 大阪府知事賞(最優秀賞)を受賞し表彰された。これは公園の健康価値、社会的価値の向上に対する評価であると理解している。

今後の課題と展開

この取り組みは、公園が持つ「健康づくりの場」という一側面に着目したものだが、ここを入口として公園の多様な魅力へと市民・企業等を呼び込み、ヒト、モノ、コト、情報の交流を通じて「健康な地域づくり」に貢献することを視野に入れている。
平成27(2015)年12月には東京都の葛西臨海公園、国営昭和記念公園での「スロージョギング教室」開催の企画協力を行っており、今後は全国展開をしていきたいと考えている。
また、健康づくりの啓発活動をさらに進めることや、社会実験として経済効果の測定などを実施することも検討している。今後も地道に活動を行い、参加者に健康に対する意識や実感を持ってもらい、公園で健康づくりに取り組む機運が高まってほしいと考えている。
取材協力(平成28年2月):ハートフル山田池、(一財)大阪府公園協会、淀川河川公園管理グループ共同体(阪神造園建設業協同組合・(一財)公園財団)、(一財)大阪スポーツみどり財団、(株)公園マネジメント研究所

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