子どものための遊び場・居場所づくり たごっこパーク

島田公園

カテゴリー:地域活性化・コミュニティ 子育て 民間活力

島田公園 写真

施設概要

所在地 静岡県富士市島田1丁目205
開設 平成4年3月31日
面積 1.27ha
公園種別 近隣公園
設置・管理者 富士市

 静岡県富士市の島田公園は、静岡県富士市の工業専用地域の中心部に位置し、重要な緑地としての役割を持っています。
 「NPO法人ゆめ・まち・ねっと」では、子どもを豊かに育む機能を「地域」が有していたころのように、子どもたちが自由に遊べる環境づくりをしようと、島田公園において「冒険遊び場たごっこパーク」を実施しています。
 「心が折れるより、骨が折れる方がましだ」をスローガンに、隔週の土日を中心に年間60日程度、活動しています。どんな家庭・環境にいる子どもも参加できる居場所づくりを心掛けており、参加費は無料、NPOスタッフは管理人というよりは見守り役です。

詳細

1.取り組み内容(背景、目的、活動内容、苦労・工夫点 等)
(1)活動状況

  「NPO法人ゆめ・まち・ねっと」では、子どもを豊かに育む機能を「地域」が有していたころのように、子どもたちが自由に遊べる環境づくりをしようと静岡県富士市の島田公園において「冒険遊び場たごっこパーク」を実施しています。「たごっこ」の名前の由来は公園にほど近い「田子の浦」です。

  「心が折れるより、骨が折れる方がましだ」をスローガンに、隔週の土日を中心に年間60日程度、活動しています。公園のとなりを流れる小潤井川でも遊んでいます。

(2)たごっこパークでの遊びの内容

  「どんな家庭や環境にいる子どもでも参加できる居場所づくりを心掛け、参加費無料・親の申し込み不要・参加年齢制限無しで行っています。

  「遊ぶのも自由、遊ばないのも自由」プログラムやイベントは無いので、独創的な遊びを一人で黙々とやる子どもや大人の許容範囲を超えてハチャメチャに遊ぶ子供が集まる場になりました。例としては、川遊び、焚き火を利用したラーメンやベッコウ飴作り、簡単な調理、木のぼり、廃材工作、台車(リヤカー)で遊ぶ、手づくり遊具で遊ぶ、ドラム缶風呂、泥遊びなどです。

(3)たごっこパークに来る子どもたち

  幼児よりも、小学校低学年~高学年、中学生、高校生が中心になっています。ここへ来るのは近所の子だけでなく、電車に乗って来る子、親の車で来る子、児童福祉施設の送迎車で来る子など多様です。複雑な家庭環境の子や障がいのある子も来ています。

  また、子供たち以外にも、小さい頃から来ていた子が若者になってからも来てくれたり、ここの活動を聞いて他県から参加する学生や家族連れもいます。

(4)活動の経緯

  妻と2人でNPO法人ゆめ・まち・ねっとを設立し活動してきました。最初の2年は新幹線駅近くの公園で活動をしていました。地縁組織との関係などうまくいかないことも多く、2年で撤退し、新たに見つけた島田公園に白羽の屋を立てました。「島田公園を使用させてほしい」と市役所にお願いしたところ、当時の公園緑地担当の方が町内会に話を通してくださったので、大きな軋轢が起きずに活動を始めることができました。

  現在の島田公園は比較的地域の皆さんからご協力いただいています。グラウンドゴルフをしている方たちとの棲み分けが必要な時もありますが、子どもたちが工作で使う廃材を定期的に提供頂くなど支援してくださるご近所さんたちがいます。

(5)NPOスタッフの立場

  NPOスタッフは管理人というよりは見守り役です。

  頼むことはありませんが、準備を手伝ってくれる子どもたちもいます。大人があまり張り切ると、子どもたちの役割や楽しみを奪ってしまうので気を付けています。

  生きづらさを抱えた子たちがたごっこパークに来てくれるのは、その生きづらさを「あなたのために支援」してあげようとするスタッフがいなく、素の自分でいられるという心地よい人間関係があるからだと思います。あくまでもここは出会いの場所で、出会った後、地域の中でどう共に生きていくかというのが問われるのであって、単純な遊び相手ならここに大人がいる必要はありません。

2.成果・効果
(1)子どもたちからの声、評価

  行政からの受託(依頼)や、特定の組織と組まずに活動してきたことで、今のたごっこパークの姿があると思っています。

  遊び方を教えてもらえる、あるいは指導されるという場所ではないので、小学生のうちは、たごっこパークの価値にあまり気付いていないかも知れません。ただ、中高生の年齢になっても引き続き来ている子どもたちにとっては、単なる遊び場から居場所という感覚が強くなるのではないかと思います。私たちにとって、子どもたちがそうした年齢になっても来てくれるということが何よりの評価かなと思っています。

(2)子どもたちの成長とともに

  よく、「子どもたちはここで成長しましたか?」と聞かれます。でも、子どもたちの成長は結果であって、目的ではありません。ここで、社会性を身につけさせてやろう、創造性を育んでやろうなどと目的を持って関わってしまったら、遊び場ではなく、教育の場になってしまいます。

  出会った子どもたちの中には、大学で専門的な学びをしている子や、それを目指している子がいます。僕らと同じ道を歩んでいる若者もいます。そのことはもちろん嬉しいなとは思いますが、みんながみんなそうなっていくことを期待することでもないと思っています。私たちは、子どもたちが今日を楽しんでくれればいいと思っています。そして、また明日、また今度、と別れられたらそれでいいと思います。

  無理解な教員や温かさのない親のもとで、自己肯定感を失っている子どもたちもたくさんいますので、その子たちがここで自分らしさを取り戻してくれたらそれで十分かなと思います。

3.課題・この先の目標
(1)子どもの居場所づくり

  「自分の居場所がない」という子たちは、学校、家庭、地域の中でその子の弱点を指摘され続ける立場になっていると同時にその改善を求められ続ける立場に置かれています。結果的に子どもたちが孤立無援の状況に置かれている状況です。

  オープンスペースと遊び、というソフトを入口に出会える生きづらさを抱えた子どもたちがいます。その子たちには「社会的支援」が必要だと言われていますが、活動をするうちに子どもたちが本当に求めているのは、支援の対象になる前の、日常の何気ない時間なのではないかという確信が芽生えてきています。

  その子たちとゆるやかに日常を共有していき、その中で一人一人の持ち味を見出してあげたいと思っています。そういう意味では私達は、管理人というより観察者のようなものです。皆が皆そうなるわけではないですが、壁にぶつかったときの最後のセーフティネットであったり、頼る場所になれたらいいなと思います。

(2)次の活動の展開

  NPO法人を立ち上げて10年になりますが、10年間変わらずにやってきた活動は、この冒険遊び場たごっこパークだけです。それ以外の活動は、子どもたちのニーズを感じながら、立ち上げてきました。数年で終わりにした活動もありますし、近年、新たに立ち上げた活動もあります。市民活動らしく、臨機応変に出会った子どもに今、してあげたいこと、してあげられることを形にしてきました。それはこれからも変わりません。長期目標がないということがある意味では自慢です。

  地域の中で生きづらさを抱える子どもたちと出会う場、そして何気ない日常を重ねていく場として、このたごっこパークは続けていくと思います。それ以外の活動は、どうなっていのか、予想が付きません。ただ、子どもたちに寄り添い続けるということだけはしていきたいと思います。それが地域の大人にできることですから。
(冒険遊び場たごっこパークは富士市教育委員会「子どもの居場所づくり」補助事業です)

NPO法人ゆめ・まち・ねっと 渡部達也

上へ戻る