ボランティアリーダーを育成

日岡山公園

カテゴリー:リニューアル 地域活性化・コミュニティ 市民参画 緑の保全・創出

日岡山公園 写真

施設概要

所在地 兵庫県加古川市加古川町大野
開設 昭和32年度
面積 35.8ha
公園種別 総合公園
設置・管理者 加古川市

 加古川市では、「うるおいあふれるグリーン・ネットワークシティかこがわ」を緑の将来像とし、公園の維持管理や整備、緑化事業に対して市民が参加できる環境を整え、平成14年度からそのボランティアの養成を行う「花とみどりのまちづくりリーダー養成講座」を毎年開講してきたところです。しかしこの間、社会情勢は大きく変動しました。そこで、10年に渡るこの講座の取り組み内容や苦労・工夫した点から今後の展開等を通じて、「まちづくりは人づくりから」という緑化ボランティアの重要な役割を以下の事例により紹介させていただきます。

詳細

1.背景・目的

 加古川市は、中央部を流れる加古川が、水と緑の大きな軸となっています。緑の現況としては、北部丘陵の谷部や印南野台地に大きなため池があり、また市街地周辺の平坦地にも東播磨地域の特徴でもある中小のため池が点在していて、この中には周辺に緑地を残すものが多く見られます。市街地内には、公園の核となる日岡山公園や浜の宮公園、鶴林寺公園が整備されていますが、日常的に利用できる公園の核となる街区公園や近隣公園が不足しています。こうした現況を踏まえて、加古川市では、「みどりとふれあうコミュニティのまちづくり」を基本理念に、「うるおいあふれるグリーン・ネットワークシティかこがわ」を緑の将来像とし、「いつまでも住み続けたいウェルネス都市 加古川」の実現を目指します。

 そこで、以下の3点を目的として、「花とみどりのまちづくりリーダー養成講座」を平成14年度から開始しました。
・市が行う公園の整備や緑化事業に対して、計画段階から市民が参加できる、または計画へ住民意見を反映できる環境を整えること
・身近な公園の維持管理について、地域住民やボランティアの自主的な参画を促進するために、ボランティアを養成すること
・ボランティア・ネットワークの拡大を図ること

2.取り組み内容

 このリーダー養成講座には、以下の5つのコンセプトを持たせています。
・養成講座を通じての人間関係の形成
・花と緑を手段にした人間性あふれるコミュニティの創造
・2年間の学習と実践を通して身に付けた花と緑の知識と技術を地域に返す
・ボランティア精神を育み、活動を通じて自らの自己実現を目指す
・ネットワークの形成と情報の発信

 養成講座の運営方法は、定員の40人を広報誌で募集し、2年間のうち、1期目の講座、2期目のグレードアップコースにより、土曜日を中心に3時間を単位として約27単位の講座を開催しています。そして、2/3以上の出席者に対し、「花とみどりのまちづくりリーダー」として市長から認定証を授与します。

 また、講座の柱と実績としては、
・植物育成上の知識・技術の教授
・ワークショップによる合意形成の学習
・日岡山公園見どころ作り(既設花壇のリニューアル化と新名所を目指す新たな花壇の作成)
・日岡山公園インタープリターの育成
・街角スポット花壇作り
・NPO法人加古川緑花クラブの誕生と活動
・受託事業(環境教育、花壇・庭の設計施工・維持管理、講師派遣など)
といった内容があり、日岡山公園をはじめ市内の公園をもっと利用しやすい親しみのあるものに作り変え、育てていくこと、また、市内の公共空地に花や木を植え、美しい花壇を作り管理することなど、花やみどりに関する知識や技術を学び実践する講座としています。

 なお、リーダー養成講座修了生を中心に平成17年に設立した「NPO法人加古川緑花クラブ」は、住民主体の「花とみどりのまちづくり」に向けた持続可能な活動を推進し、地域のコミュニティ形成に尽くすことを目的としており、現在ではリーダー養成講座の運営を市から委託しているほか、街角花壇7ヵ所の管理や小学校の郊外学習への指導・協力など様々な活動を行っています。

3.苦労・工夫した点

 この講座の運営において苦労した点としては、以下のようなことが挙げられます。
・応募人数の確保

 単なる花とみどりの技術の習得を目的とする講座ではなく、1~2年をかけての緑化ボランティアリーダー育成の有料講座であることから、志の高さが求められハードルが高いものです。10年間の講座で景気の良いときには定員を超える応募がありましたが、リーマンショック以降は厳しいのが事実です。団塊の世代の定年後をターゲットとして人材確保を試みた昨今、景気だけではなく人々の気質、価値観の変化も感じられ、ボランティアの組織化は一層困難になりました。
・講座目的の認識

 緑化ボランティアとしての活動を最終目的とする講座に、個人の技芸の習得のため受講した人々には、本来の目的を認識させ、活動してもらうことへの意識づけが難しい状況です。
・活動への継続

 講座中は一生懸命、優等生的に学んでいる人々のモチベーションを持続させ、修了後、緑化ボランティアとして継続的に活動してもらうことが課題となっています。
・各学年間の人間関係

 ハードルの高いカリキュラムと作業を通じて生まれた学年(期)の結束力は、とても強いものです。講座修了後、NPO法人加古川緑花クラブに入会しても、各期で集まり行動してしまう傾向が強く、クラブという組織としての期を超えた考え方や活動を受け入れることには抵抗があり、組織がまとまりにくい場合もあります。

 また、講座の運営において工夫した点としては、以下のようなことがあります。
・応募人数の確保

 市の広報誌への掲載、ホームページ、講座オリジナルのチラシの配布などで周知を図っていますが、一番効果があるのは修了生たちの口コミです。実際に経験した人々からの勧誘はそれだけ説得力があり、受講する人の確率は高くなります。
・講座目的の認識

 なかでも、卒業制作の実習を通じてその期の人々の意識、志は高くなります。自分たちで考え、仲間と協力して暑い時期も寒い時期も情熱を傾け、制作したものに対する愛着は強く、その後の維持管理の継続へとつながっています。理屈ではなく、作業を通じての活動が大切と考えられます。
・活動への継続

 講座中はできるだけ、受講生が自主的に考え、行動するように指導し、活動に対しては可能な限り支援しています。また、交流会(忘年会、新年会、バーベキュー大会など)を受講生で企画・運営してもらい、その交流を図るとともに行政職員などへも参加を呼びかけ、意思疎通を良くするよう工夫しています。
・各学年間の人間関係

 NPO法人加古川緑花クラブを通じてイベントを企画、運営、作業、交流会などに参加してもらうことで、少しずつ期を超えた新たな人間関係が生まれています。

4.効果・成果

 地域住民やボランティアの自主的な参画を促進するために、ボランティアを育成するという業務の内容からも、NPO法人の専門的な企画構想力、ノウハウを活用することで、緑化推進を市民と行政が協働で行うための緑化の知識、技術、人との交流等のカリキュラムを作成し、緑化ボランティアリーダーによる地域緑化の推進を図ることができています。

5.課題やその対応

 先行き不安な社会情勢の中で、大量に生み出される有閑階級をどう取り組み、緑化ボランティア活動につなげることができるでしょうか。特に、男性を活動にどれだけ巻き込むか、また、現役中の世代の参加をどう勧誘するか、これからまちづくりを行う人への啓蒙が必要であると感じています。

 さらに、市からNPO法人へ委託できる業務はないかを、随時ではありますが、月1回程度の事業の進捗状況を協議する場を設けて、市とNPO法人の両者で問題点等について話し合うことにしています。また、リーダー養成講座修了生に対して、1年間の振り返りアンケートを実施し、その集計結果をまとめて、次回実施に向けて両者で問題点等についての検証を行うようにしています。

6.今後の展開等

 養成講座を続けることで、花やみどりの自然と関わる活動を行い、地域の美化、景観・防犯へも寄与し、魅力的なまちづくりに貢献することができます。また、活動を通じて育まれた人間関係は、地縁から知縁へと発展し、新たなネットワークの形成へと移行する可能性があります。これは、単なる緑化政策において有意義であるだけではなく、人々の生きがいづくりにも有効で、高齢化社会にも寄与するところは大だと言えます。行政的にも、少ない投資で最大限の効果を挙げることができると考えています。

 また、ボランティア活動ではまず楽しむことが大事であり、楽しんだ結果が誰かの喜びになる素晴らしい活動です。行政側から参加者に、やる気・元気を持たせてあげることで、活動の「必然性・使命感」を感じて「持続・継続」し、「仲間」とともに、また「専門家(プランナー、コーディネーターなど)」の助言により、さらに「行政の協力・支援」があることで、自己の「夢実現」に向かうことができるのです。

 最後に、このリーダー養成講座の講師をお願いしているNPO法人加古川緑花クラブの安尾昌子さんは、「コミュニケーション能力を高めることは、人が心地よい環境を作るために最も重要なことであり、まちづくりは人づくり」と言われています。人にとって心地よい環境を自然にとっても良い条件で、人と自然が共存し合える関係を作ることが、緑化ボランティアの重要な役割であると思えるようになりました。

加古川市 建設部 公園緑地課

 

 

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