多様で美しい共生の地

長池公園

カテゴリー:地域活性化・コミュニティ 環境教育 生物多様性 緑の保全・創出

長池公園 写真

施設概要

所在地 東京都八王子市
開設 平成12年4月1日
面積 総合公園(自然保全型)
公園種別 独立行政法人都市再生機構(旧都市基盤整備公団)
設置・管理者

 長池公園は、多摩ニュータウン最大の自然環境エリアとして2000年12月に開園した自然保全型公園です。江戸時代から存在するため池、長池を中心とする多様な水辺環境や雑木林といった豊かな里山景観と動植物相が保全されてきました。2006年4月から、NPOフュージョン長池・株式会社富士植木・株式会社エーデン(平成26年度以降、株式会社プレイスより変更)の三者連合体である「フュージョン長池公園」が長池公園の指定管理者として管理運営を継続しており、里山文化の継承と創造、自然環境の保全、住民コミュニティの形成の3つをコンセプトに掲げた様々な里山活動を展開しています。

詳細

1.背景

  長池公園のある多摩ニュータウンのライブ長池地区は、京王相模原線の京王堀之内駅前を都市核、長池公園周辺を自然核とし、その2つの核が「せせらぎ緑道」を軸に結ばれるという「2核1軸構想」により、一体的かつ有機的な空間形成を図ることを目的としてUR都市再生機構によって設計・施行された地域です。この構想において、本公園は多摩ニュータウンという新しいまちにありながら、豊かな自然の残存する里山環境という重要な位置付けであり、人と自然が寄り添い共生する場所としての永久的な保全が求められています。

2.目的

  長池公園は、人と自然が共生する空間の実現を目指すため、新しいまちと昔ながらの里山景観の融合を目的とする自然保全型の総合公園です。里山文化の継承と創造、自然環境の保全、住民コミュニティ形成の3つをコンセプトに掲げた多様な里山活動を実施しています。 ①里山文化の継承と創造 里山の自然環境を、住民による雑木林の管理や田んぼ作りなどの里山活動を通して保全するとともに、ネイチャーイベントなどを開催し、子供達が自然に触れ合う機会の創出を行っています。 ②自然環境の保全 多摩地域では貴重なハンノキ群落をはじめとする豊かな自然環境の保護、保全を行っています。 ③住民コミュニティ形成 里山の保全やイベントなど、人とみどりをつなぐことによって住民のコミュニティ形成を促しています。

3.管理手法1「ゾ-ニングによる多彩な緑地管理スタイル」

  長池公園は、面積約20haを誇る自然保全型の総合公園です。本公園では、園内を6つのゾーンに分けて、それぞれの特色に合わせた管理手法を用いています。例えば、体験学習施設長池公園自然館、芝生広場、姿池周りの人工的な空間を有する北エントランスゾーンでは、他のゾーンより芝刈りや草刈の回数を増やし、年間を通して誰もが気軽に散策や休息を楽しめるよう努めています。また、芝刈機・刈払機・手作業といった管理機械の使い分けにより開放的な景観の維持と管理上の安全対策を徹底しています。一方、長池から築池に流れる小川と湿地、雑木林からなり、カタクリの花など四季折々の植物が観察できる観察ゾーンでは、希少な植物を残した選択的草刈り、景観向上と生物多様性維持を目的とする刈り残しといった管理上の工夫をしています。またそれらを来園者にわかりやすく理解していただけるよう手作りのサインボードを設置したり、より間近で動植物を観察できるよう木道や水辺観察ボードを整備するなど丁寧で親しみ溢れる配慮を行っています。

4.管理手法2「創意工夫の保全管理活動」

  「来園者にとって快適なみどり」の創出と「多様な自然環境の保全と均衡・調和」を図ることを目指した創意工夫の保全管理に取り組んでいます。こうした取り組みの中で私たちは自生種や郷土種を中心とした緑のデザインを自然美として捉え、重点を置いています。園内には里山を象徴するカタクリ・リンドウや全国的にも減少が著しいサワギキョウ・オオニガナなどの希少な自生植物が多く生育しており、これらは各種の生態特性に合わせて個別の管理を行い、生育環境の整備や種子繁殖・挿し木等による保護増殖を実施しています。植栽に関しては園内自生の植物相に影響が出ないよう、極力自生由来の系統を使用し、園芸種や他地域からの持ち込みによる場合は林内への侵入や遺伝的な攪乱を避けるため植栽場所を自然館周辺と花壇に限定し、慎重に行っています。地域の絶滅危惧植物を園内の豊かな環境下で保護していく取り組みも実施しています。これらは園内自生種でないことを前提に周囲の生態系への影響に配慮しながら受け入れています。これらを「自生のノハナショウブによる菖蒲園」、「地域の希少種でアレンジした浮島」といった独自の見せ方・演出により、来園者が快適なみどりとして感じ取っていただくための工夫を実現しています。

5.管理手法3「徹底した環境配慮と園内資源の活用」

  八王子市LAS-Eハンドブック(自治体環境基準)をもとに独自の取組みを加えた長池公園LAS-Eハンドブック(エコを楽しもう)に準じて、公園管理におけるエコな工夫や公園発生材の有効活用を実施しています。エコな工夫の一つに「刈り残し」があります。雑木林の林床に密生するササを園路に沿った一定の幅の部分刈り残すことで、林内踏み込み防止の柵として活用しています。刈り残しによる柵は林内に生息する野鳥や小動物に対する目隠し効果にもなっていると考えられます。刈り草や刈りササ、ツル、伐採木、剪定枝、竹材といった公園作業による発生材の、資源としての再活用を徹底し、100%園内処理を目指すものです。 [園内資源の活用例] ・雑木林管理で発生した伐採木は、倒木ベンチ・園路のヘッジ・クラフト材などに再活用 ・竹林管理で発生した竹材は、フェンス・植物解説及びマナーサインの支柱などに再活用 ・台風等の災害で発生した材も、剪定枝のエネルギー化実証事業に協力するなど地域と連携を図ることで発生材を徹底して有効に活用しています。 ・ツルを使ったリースやかご作りをはじめ、公園内の資源を有効活用した様々なイベントを開催し、来園者への環境啓発にも積極的に取り組んでいます。

6.管理手法4「あらゆる主体と多様な世代の協働」

  指定管理者フュージョン長池公園は、NPOフュージョン長池(公園管理運営の全体統括)、株式会社富士植木(高度な緑地管理)、株式会社エーデン(各種電気設備の保守管理)の三者連合体です。八王子市公園課を岩盤、指定管理者を表土、多様な利用者や活動主体を花畑になぞらえた公園管理において、NPOが指定管理者の代表団体を担うことで、表土の公益事業化を実現しています。日常的な管理は、直接雇用された地元住民が主体となり、週に1回3時間働くシニア世代と専門家がチームを構成して行っています。また、少子高齢化を肯定的に捉え、働き手の幸せを実現しています。20代から80代までの多世代ワークシェアリングを実施することで、多様な付加価値が提供されています。さらには、他団体との連携も積極的に実施しており、地域との協働による公園管理と里山保全を展開しています。 ①長池里山クラブ(地域住民が参加している八王子市公園アドプト団体) ・田んぼや畑の維持管理、雑木林の伐採更新と炭焼き、イベント開催等の里山管理活動で連携 ・指定管理者が長池里山クラブの事務局等をサポート ②市内の障がい者就労施設 ・公園内や体験学習施設の日常清掃と物販のほか、池清掃や緑地管理を協働で実施 ③地域の小中学校、大学 ・総合学習や職場体験、インターンシップ活動と連携した緑地管理も積極的に実施 ④近隣の行政機関 ・東京都、多摩市、町田市など近隣地域の行政機関と研修会や交流会を通じて連携

7.成果・効果

  長池公園の多様な取り組みによる効果を、定量的に評価するデータとして、年間(2012年度)の来園者数、イベント参加人数、視察来園者数等の実績をご紹介します。指定管理者導入前の2005年度は、長池公園の来園者数は年間約6万人であり、この7年間で3倍近く増加しています。 [平成24年度実績] ・推定来園者数:約16万5千人、自然館来館者数約6万8千人 ・各種イベント:48回実施、延べ656人参加 ・体験学習教室:109回開催、延べ1297人参加 ・小中学校視察総合学習来園数:50団体1055人 ・大学視察来園者数:43団体199人 ・視察等来園来館者数:273団体、延べ3082人 また、定量的な評価の難しいボランティア活動の時間数や寄贈品の件数も、公園の取り組みを評価する一つの基準として捉えており、独自にデータの集計・蓄積を進めています。 ・ボランティア活動:延べ2893人、14461時間(※比較として有給者労働時間:約19711時間) ・寄贈品件数:20件、寄贈図書件数:37件 地域の小中学校の総合学習や職場体験、出張講座、大学のインターンシップ、課外授業などの積極的な実施、そして長池みどりの学校と称した、ネイチャーイベント、体験学習教室、里山管理講座などの開催などの多岐にわたる取り組みの成果として、非常に多くの方々が長池公園と関わっていることがわかります。 また、公園内での活動のみならず、地域への広がりも広報誌「みんなの長池」の年4回発行をはじめ、ホームページや地域情報誌へのイベント情報掲載を行っているほか、「みんなの長池公園」展示会(長池公園の現況を説明)を開催するなど、地域の方々に長池公園の魅力を伝え、親しんでいただくために積極的に情報発信を行ってきました。さらに、多摩丘陵の都立公園5公園と八王子市の2公園による情報交換会(多摩丘陵懇談会)を定期開催しており、2013年には人がつなぐ緑の回廊をコンセプトとする散策マップ「多摩丘陵 人と緑の回廊を歩こう!」が完成しました。 なお、これまでに長池公園で実現してきた多様な取り組みは表彰という形でもご評価をいただいております。平成23年度に(一社)日本公園緑地協会主催の第27回都市公園コンクール 管理運営部門において(一社)日本公園緑地協会会長賞受賞、さらに平成24年度には、(公財)都市緑化機構主催の第32回緑の都市賞 緑の拠点づくり部門において国土交通大臣賞を受賞しました。これは、UR都市機構による長池公園の計画・施工をはじめ、八王子市役所関係者や多くの地域の方々との協働作業の末、長い月日をかけて積み上げられてきた成果が高く評価されたということにほかならないでしょう。

8.課題・今後の展開 等

  今後は長池公園を拠点に「都会的田舎暮らしができるまち」「人と緑の回廊計画」の実現に向け、より広視野で多様な活動を展開していきます。
①さらなる都市景観と里山景観の調和
・都市景観と里山景観の双方に配慮した緑地管理に磨きをかけます。
・より景観に配慮し洗練されたデザインのサインや解説プレートを引き続き考案していきます。

②希少な自生植物の保全活動

・神代植物公園植物多様性センター、多摩丘陵の都立公園グループとも協力しながら、地域の絶滅危惧植物の適正で持続的な保全活動を進めていきます。
③環境配慮
・園内処理と資源の有効活用にはさらなる工夫を考案していきます。
・地域の生ゴミや剪定枝をリサイクルしている民間施設等と連携し、地域の緑のリサイクルにも取り組む予定です。
④緑の保全や環境への取り組みを地域へ
・みどりの学校、地域の小中学校への環境学習教育、大学との連携をさらに充実させ、緑の保全や環境への取り組みを地域へ広げていきます。(地域みんなで公園管理)
・総務省自治大学校や国土交通大学校の講師として研修会を通して取り組みを全国に発信します。
・「多摩丘陵 人と緑の回廊を歩こう!」マップを活用したウォーキングイベントなどの開催

フュージョン長池公園

 

 

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